忍者ブログ
ある時代の流れの中に存在した、ひとつの研究施設を軸にしたキャラ紹介と物語。「戻る」はブラウザBackかパン屑リスト使用推奨です
 
トップページ ≫  story ≫  ≫ [PR]セン ≫ もしも仲がよかったら
 
 [PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

ジーンさんが主役じゃないかってご意見を頂いたわ。
ふふ、嬉しいけど残念ながら違うのよね。
あたしをワキに置いておくなんて、背後もいい度胸してるわよねぇ。
まあ、でもその分日記では弾けるわよ。

今日は背後からの指令の続きといこうかしらね?
「02 もしも仲がよかったら」…誰と誰がなんて聞くまでも無いわよね…。
まったくもう少し交流が広がって、あちこちで人間関係が発生してからにして欲しいんだけど、
今の状態だったらあたしとセンのことしかないわ。

この指令は前回と同じく、『番外編用12のお題~もしも編~』
「ing+be...」さま(http://xy765.web.fc2.com/)からお借りしてるわ。
ん…まあ、あれで案外動物が嫌いとかじゃなさそうなんだけどね。
種族が違うと色々とこう、溝も深いわね。
……それ以前に意志の疎通が出来ないからじゃとかいうツッコミはなしよ?

**********

しとしとと雨が降る。
地面を草木を濡らし、あちこちに水溜りを作っていく。
決して豪雨では無いけれど間断なく降り続く雨は、まるでヴェールを被せたみたいに周囲の景色をぼんやりと包み込んでいた。
「………次の町までは…ん、だいぶあるな」
大きく枝を広げた木陰で、この周辺の地図を広げたセンがそう眉を顰める。
濡れた髪が水を吸って首筋に張り付き色を濃くしていて、何だか少し別人のようにも見えた。
あたしは少しだけそれを観察していたが、そうしていても何も変わらないことに気づいて首を回してせっせと身繕いに入る。
濡れるのは嫌いだ。
雨の日なんかは外には出ないで、暖かな暖炉の前ででも丸くなって居たいものだけど。
そんなことを思い暖炉の暖かさを想像してうっとりしていたあたしは、落ちてきた呟きにぎょっとして動きを止めた。
「ここで野宿しかないか…。木の根元は体が痛くなるんだがな……かといって雨の日に木登りするのもな…」
この男はどうやらもう今日はここから動かないつもりらしい。
確かに雨の中を走るとかいうのも願い下げだけど、その選択肢もどうかと思う。
ただでさえ野宿はそんなに歓迎しない。
まだ暖かい毛布でもあればマシだけれどこの男がそんなもの持ってるわけないし、そもそもあたしの寝場所を少しでも考えてるかどうかはもっと怪しい。
その上さらに雨が降り続いているとなれば、これはもう嫌なもののトップ3に入りそうよ。
センは濡れた外套の紐をやや苦戦しながら解くと、それを肩から落とし手近な高さにあった枝の出っ張りに引っ掛けた。
そしてあたしにまったく気を配らずに木の根元に腰を下ろすと、さっき地図を広げる前に荷物から取り出した布切れで髪や首筋を簡単に拭っていく。
と、その視線がふっと少しも弱まる気配の無い雨に逸れ、やや苦笑じみた笑みと共に動かしていた手を止めた。
「雨は…まあ、嫌いじゃないんだが……」
言いながらいつかも同じ言葉を言った覚えがあったのか、懐かしそうな複雑な表情を浮かべる。
こいつもこんな顔するのね、とあたしは少し意外に思った。
どこか甘い、でも何だか切ない感じの顔。
何か特別な思い出でもあったのかもしれない。
だけど続けられた言葉に、あたしはがっくりと頭を垂れた。
「だが体温は奪われる、視界は悪くなる、足元のコンディションは最悪……そう手放しで歓迎できたものでもない、な」
最初はわざとなのかと思ったけど、この男のこういうところは本気で素みたいだ。
何で一々こう一言多いんだろうか。
理性的というよりは何ていうか…そう、空気が読めない。
あたしは再び毛繕いを再開した。
センもそれ以上聞く者のない独り言を続けるつもりはないのか、無言で雨を眺めている。
そうやってしばらく時間が過ぎた。

陽が落ちても雨はやむ気配を見せない。
段々と周囲に闇が落ち、雨音だけが辺りを支配した。
ごそ、と隣の存在が動く気配に、いつの間にか木の根の間で丸くなっていたあたしはハッと顔を上げる。
闇の中を透かし見れば、センがシュラフを用意していた。
やはりそのままここで眠るようだ。
急に冷え込んできて、無意識に体がぶるりと震える。
あたしは少し逡巡した末、根っこの間から出て強引にセンの首元からシュラフに潜りこんだ。
「…………」
センは僅かに息を吐いたが、特に引きずり出したりする気もないようだった。
あたしは温もりに身を寄せて、再び丸くなる。
くあーと自然と欠伸が零れた。
シュラフ越しだと雨の音もそんなに気にならない。
ぬくぬくの暖炉の前には劣るけれど、これはこれでまあ悪くはないかもと思った。
まあ、多少窮屈なのは目を瞑るとしてね。

それ以降、野宿のときはそこがあたしの定位置となったのだった。

**********

これ、もしもの話じゃなかったわね。
あっ、でも別に仲がいいわけじゃないわよ?
寒いと仕方ないわよね…というか、あたし用にちゃんと寝る場所をこしらえなさいよ。
大体センはあたしのこと特に気にしてないから、仲がいいも悪いも無いのよね。
まったく失礼しちゃうわ。

拍手

PR
 最新記事 
 アルカナこれくしょん 
 プロフィール 
HN:
S
性別:
非公開
 Secret 

Template by ららららいふ / Material by 素材くん「無料WEB素材屋」

忍者ブログ [PR]