ある時代の流れの中に存在した、ひとつの研究施設を軸にしたキャラ紹介と物語。「戻る」はブラウザBackかパン屑リスト使用推奨です
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『それはおそらく決まっていたことなのだろうと思う。
ずっと前から薄々と気づいていた。自分はそんなに長く生きられない。
だからどうせ同じくこの世を去るならば。
大切な人たちの役に立てたらとそう思っていた』
レンは熱に浮かされたぼうっとする頭を振り、何とか言葉を紡ごうとしていた。
自分の限界は分かっている。
すべてが闇に閉ざされてしまう前に、伝えたい言葉があった。
視線を横に流せば、心配そうに側で手を握っていてくれる細身な女性の姿がある。
エリシール・ポーランド。
自分たちの冒険の始まりとなったお姉さんだ。
今、その顔は深い自責の念と悲哀に彩られている。
「レンくん…!しっかりしてくださいまし…っ」
泣きそうな震える声は聞いているこっちの方が切なくなりそうだ。
「…エリー。レンは…大丈夫だから…。…絶対このまま死なせない」
その肩を抱くように支えながら、自分にも言い聞かせるように噛み締めた言葉を発する引き締まった体躯の男性。
レオン。最初にエリーと出会い、ずっと傍らで支え続けてきたお兄さん。
経験と自信に裏打ちされたその確かさは、いつも皆から頼りにされてきた。
「…私が……。私でよかったですのに……!」
レオンが紡いだ『死』という単語が余計に感情の琴線を震わせてしまったらしい。
エリーの明るい紫色の瞳が、盛り上がった涙で曇った。
「呪われたのは私で……っ、死ぬはずだっ…たのは私ですの…に…っ」
「…やめてください。レンには勝算があった。だから呪いを引き受けたんです。
今、あなたにそんなことを言わせるためじゃありません」
ベッドに伏せっている状態のレンの位置からは見えないが、どうやら部屋には他の仲間たちも居るようだった。
「勝てなかったのは彼の力不足です…。だから、エリーさんが責任を感じる必要はないんですよ」
どこか抑えた聞きようによっては冷たいとも思える声。
ラビだ。もっともいつも非情にはなりきれないでいるのを皆知っている。
今もむしろ、エリーの悲しみを少しでも別の方向に向けようとしているように思えた。
例えば、怒りみたいな。
「…力不足と言うなら、私の方がそうですわ…っ!それに、これは私に向けられた呪いですのよ?!私が負うのが当然ですわ……っ!」
果たしてそれは少しは成功しているようだった。
「僕にもっと力があればよかったんですけど…。もっと知識があれば…」
エリーとは違う方向に落ち込んだ声。ルードだろう。
レンは霞む目を何度か瞬かせた。
すべてをこの目に焼き付けておきたい。
どこよりも居心地のいい、自分の居場所となった彼らの顔を覚えておきたい。
ルードも枕元に膝立ちで立っていた。分厚い魔術書を抱え、それに額を押し付けるようにしている。
「そんな馬鹿なことをそこで呟かれるぐらいなら、アルさんやまりあさんたちみたいに今もまだ解呪法を探して飛び回っていてくれてる方がかなりマシなんですけどね…」
近づいてくる気配があってルードの後ろからラビも顔を覗かせた。
祈りの言葉とともに伸ばされた手が額に触れていく。
柔らかな温もりが苦痛を少し和らげてくれた。
「レン。辛いでしょうがまだ安らかにはさせてあげませんよ。…最後の最後まで足掻いてもらいます」
私たちの自己満足でしょうか…なんて小さな呟きが聞こえて、レンは首を横に振った。
少しは微笑めたかもしれない。
おそらくもうどうしようもないことは分かっているけれど。
それでも最後の瞬間まで…諦めない。自分たちは諦めが悪いのだ。
エリーに捕らえられているレンの小さな指が、ピクリと動く。
伝えたい言葉がある。
エリーお姉ちゃんに、伝えておかなくちゃいけない言葉が。
幼い魂が砕ける日はそう遠い未来ではなかった。
『それはおそらく決まっていたことなのだろうと思う。
ずっと後になって気が付いた。年端もいかない少年が告げようとしていたこと。
楽しかったあの時が、大切な人たちが戻せるのなら。
何をしてでも何を捨てても構わないとそう思っていた』
ずっと前から薄々と気づいていた。自分はそんなに長く生きられない。
だからどうせ同じくこの世を去るならば。
大切な人たちの役に立てたらとそう思っていた』
レンは熱に浮かされたぼうっとする頭を振り、何とか言葉を紡ごうとしていた。
自分の限界は分かっている。
すべてが闇に閉ざされてしまう前に、伝えたい言葉があった。
視線を横に流せば、心配そうに側で手を握っていてくれる細身な女性の姿がある。
エリシール・ポーランド。
自分たちの冒険の始まりとなったお姉さんだ。
今、その顔は深い自責の念と悲哀に彩られている。
「レンくん…!しっかりしてくださいまし…っ」
泣きそうな震える声は聞いているこっちの方が切なくなりそうだ。
「…エリー。レンは…大丈夫だから…。…絶対このまま死なせない」
その肩を抱くように支えながら、自分にも言い聞かせるように噛み締めた言葉を発する引き締まった体躯の男性。
レオン。最初にエリーと出会い、ずっと傍らで支え続けてきたお兄さん。
経験と自信に裏打ちされたその確かさは、いつも皆から頼りにされてきた。
「…私が……。私でよかったですのに……!」
レオンが紡いだ『死』という単語が余計に感情の琴線を震わせてしまったらしい。
エリーの明るい紫色の瞳が、盛り上がった涙で曇った。
「呪われたのは私で……っ、死ぬはずだっ…たのは私ですの…に…っ」
「…やめてください。レンには勝算があった。だから呪いを引き受けたんです。
今、あなたにそんなことを言わせるためじゃありません」
ベッドに伏せっている状態のレンの位置からは見えないが、どうやら部屋には他の仲間たちも居るようだった。
「勝てなかったのは彼の力不足です…。だから、エリーさんが責任を感じる必要はないんですよ」
どこか抑えた聞きようによっては冷たいとも思える声。
ラビだ。もっともいつも非情にはなりきれないでいるのを皆知っている。
今もむしろ、エリーの悲しみを少しでも別の方向に向けようとしているように思えた。
例えば、怒りみたいな。
「…力不足と言うなら、私の方がそうですわ…っ!それに、これは私に向けられた呪いですのよ?!私が負うのが当然ですわ……っ!」
果たしてそれは少しは成功しているようだった。
「僕にもっと力があればよかったんですけど…。もっと知識があれば…」
エリーとは違う方向に落ち込んだ声。ルードだろう。
レンは霞む目を何度か瞬かせた。
すべてをこの目に焼き付けておきたい。
どこよりも居心地のいい、自分の居場所となった彼らの顔を覚えておきたい。
ルードも枕元に膝立ちで立っていた。分厚い魔術書を抱え、それに額を押し付けるようにしている。
「そんな馬鹿なことをそこで呟かれるぐらいなら、アルさんやまりあさんたちみたいに今もまだ解呪法を探して飛び回っていてくれてる方がかなりマシなんですけどね…」
近づいてくる気配があってルードの後ろからラビも顔を覗かせた。
祈りの言葉とともに伸ばされた手が額に触れていく。
柔らかな温もりが苦痛を少し和らげてくれた。
「レン。辛いでしょうがまだ安らかにはさせてあげませんよ。…最後の最後まで足掻いてもらいます」
私たちの自己満足でしょうか…なんて小さな呟きが聞こえて、レンは首を横に振った。
少しは微笑めたかもしれない。
おそらくもうどうしようもないことは分かっているけれど。
それでも最後の瞬間まで…諦めない。自分たちは諦めが悪いのだ。
エリーに捕らえられているレンの小さな指が、ピクリと動く。
伝えたい言葉がある。
エリーお姉ちゃんに、伝えておかなくちゃいけない言葉が。
幼い魂が砕ける日はそう遠い未来ではなかった。
『それはおそらく決まっていたことなのだろうと思う。
ずっと後になって気が付いた。年端もいかない少年が告げようとしていたこと。
楽しかったあの時が、大切な人たちが戻せるのなら。
何をしてでも何を捨てても構わないとそう思っていた』
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