ある時代の流れの中に存在した、ひとつの研究施設を軸にしたキャラ紹介と物語。「戻る」はブラウザBackかパン屑リスト使用推奨です
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2、「時間」
レンは困惑して、自分よりも5つぐらいは年上のお姉さんを見上げた。
あまり聞いた事のない訛りで話す彼女の瞳は、今は怖いくらい真剣な色に支配されている。
そこでふと、気が付いた。
このお姉さんの瞳も自分と同じように色が違う。
それは自分ほど明らかに違う色ではなかったが、夜の闇のように黒い右目に比べて左は色素が薄く茶色っぽかった。
もしかして…?
レンの胸に小さな期待が灯る。
このお姉さんも自分と同じなのではないだろうか?
自分と同じように、“無意識に時を飛んでしまう力”を持っているのではないだろうか?
「あの…!」
レンは口を開く。
彼女がつい先ほど紡いだ名前には聞き覚えがあった。
『高岡竜司』。
それはどこかの時で見た男の人の名前だったはずだ。
最初は名前を知らなくてネコミミお兄ちゃんと呼んでいたけれど、彼と一緒に旅をしていた人に励まされ、再び彼の前に落ちた時に勇気を出して話しかけた。
そういえば彼は待っている人がいるとか言ってなかっただろうか?
「お姉さん…ふうか、さん?」
レンの言葉に、お姉さんの顔色が変わった。
ぐっと襟元を掴みあげられ、呼吸が阻害される。
「やっぱり会うたんやな?! あのバカはどこにおるんやっ?!」
「…っ……くるし…っ……」
「隠してもためにならへんでっ? この山で会うたんか?!それとも…!」
矢継ぎ早に浴びせられる彼女…風夏の言葉はレンにはほとんど聞こえていなかった。
離してほしいという意味も込めて、精一杯にもがく。
その足が風夏の脛に当たり、ようやく彼女ははっとして手を離した。
「か、堪忍な…?生きとる…?」
涙ぐみ咳き込むレンの顔を、風夏が心配そうに覗き込む。
レンはとりあえず首を小さく縦に振ることでそれに答えた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
風夏が水筒から注いだ清水を飲み、レンはようやく一息ついた。
風夏の目が話を促してくるのに、こくりと頷く。
「この山じゃないよ。僕がお兄ちゃんと会ったのは…」
時間に印は付けられない。
あれがどこだったのかは分からず、また同じ時に飛べるかも分からない。
ただ分かることは…あれが今、こことは違う時であったということだけだ。
それをどう説明していいか分からず、レンは言葉を濁した。
「……お姉ちゃんは時間旅行とかタイムパラドックスとか信じる?」
次に出せたのはそんな言葉だった。
風夏の顔が難しそうにしかめられる。
「…そやなぁ。映画やったら知っとるわ。過去の世界に飛んでしもて大混乱!とか」
えいが、というのは分からなかったが、彼女にとってそれは他人事…それも遠い世界の出来事なのが分かった。
レンは風夏の色の違う瞳を見上げた。
同じ親しみを感じていたそれが少し遠くなる。
ただ瞳の色が左右で違うというそれだけで勝手に同じだと思ってたのは自分だけれど、何故か裏切られたようなそんな気持ちが、ちり…と胸を焦がした。
首を小さく左右に振ってそれを振り払い、レンは言葉の先を続ける。
「信じてもらえるかは分からないけど、竜司お兄ちゃんはこことはちがう時間にいるんだ。お兄ちゃんは知らない町に迷い込んで、気が付いたらそこにいたって言ってた」
「それ、どういう意味や…?」
案の定、風夏が困惑したような声を漏らした。
レンは俯く。自分だってまだこれがどういうことなのか、分かってるわけじゃない。
ちゃんと説明できるほど知識を持っているわけじゃない。
ふと、風夏が思い当たったように、小さく声を上げた。
「そういや、竜司は昔そういうん好きやったなぁ。押入れの中が別世界につながっとるとかそうゆうん」
自分の記憶に納得するように何回か頷いている。
「ウチもな、気が付いたら見覚えない変なとこにおったことあるわ。あれは夢や思うてたんやけど、ほんまにそうゆうことあるんやなぁ」
「………え?」
今度はレンが呆気に取られる番だった。
どうやら急激に風夏の気持ちはレンの話を信じる方向に転がっているらしい。
あまりに急激すぎて付いていけずに首を傾げているレンの前で、風夏が勢いよく立ち上がる。
「あんた、竜司のおるところに行けるんか?そやったら案内してな」
「え、え…?」
手を掴まれ、展開に付いていけないまま引っ張られた。
レンは引っ張られながらもう一度、風夏の顔を見上げる。
どういうわけかすでに彼女の瞳には困惑も疑念も微塵もなかった。
「………ええ?」
レンはさらに首を傾げた。
レンは困惑して、自分よりも5つぐらいは年上のお姉さんを見上げた。
あまり聞いた事のない訛りで話す彼女の瞳は、今は怖いくらい真剣な色に支配されている。
そこでふと、気が付いた。
このお姉さんの瞳も自分と同じように色が違う。
それは自分ほど明らかに違う色ではなかったが、夜の闇のように黒い右目に比べて左は色素が薄く茶色っぽかった。
もしかして…?
レンの胸に小さな期待が灯る。
このお姉さんも自分と同じなのではないだろうか?
自分と同じように、“無意識に時を飛んでしまう力”を持っているのではないだろうか?
「あの…!」
レンは口を開く。
彼女がつい先ほど紡いだ名前には聞き覚えがあった。
『高岡竜司』。
それはどこかの時で見た男の人の名前だったはずだ。
最初は名前を知らなくてネコミミお兄ちゃんと呼んでいたけれど、彼と一緒に旅をしていた人に励まされ、再び彼の前に落ちた時に勇気を出して話しかけた。
そういえば彼は待っている人がいるとか言ってなかっただろうか?
「お姉さん…ふうか、さん?」
レンの言葉に、お姉さんの顔色が変わった。
ぐっと襟元を掴みあげられ、呼吸が阻害される。
「やっぱり会うたんやな?! あのバカはどこにおるんやっ?!」
「…っ……くるし…っ……」
「隠してもためにならへんでっ? この山で会うたんか?!それとも…!」
矢継ぎ早に浴びせられる彼女…風夏の言葉はレンにはほとんど聞こえていなかった。
離してほしいという意味も込めて、精一杯にもがく。
その足が風夏の脛に当たり、ようやく彼女ははっとして手を離した。
「か、堪忍な…?生きとる…?」
涙ぐみ咳き込むレンの顔を、風夏が心配そうに覗き込む。
レンはとりあえず首を小さく縦に振ることでそれに答えた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
風夏が水筒から注いだ清水を飲み、レンはようやく一息ついた。
風夏の目が話を促してくるのに、こくりと頷く。
「この山じゃないよ。僕がお兄ちゃんと会ったのは…」
時間に印は付けられない。
あれがどこだったのかは分からず、また同じ時に飛べるかも分からない。
ただ分かることは…あれが今、こことは違う時であったということだけだ。
それをどう説明していいか分からず、レンは言葉を濁した。
「……お姉ちゃんは時間旅行とかタイムパラドックスとか信じる?」
次に出せたのはそんな言葉だった。
風夏の顔が難しそうにしかめられる。
「…そやなぁ。映画やったら知っとるわ。過去の世界に飛んでしもて大混乱!とか」
えいが、というのは分からなかったが、彼女にとってそれは他人事…それも遠い世界の出来事なのが分かった。
レンは風夏の色の違う瞳を見上げた。
同じ親しみを感じていたそれが少し遠くなる。
ただ瞳の色が左右で違うというそれだけで勝手に同じだと思ってたのは自分だけれど、何故か裏切られたようなそんな気持ちが、ちり…と胸を焦がした。
首を小さく左右に振ってそれを振り払い、レンは言葉の先を続ける。
「信じてもらえるかは分からないけど、竜司お兄ちゃんはこことはちがう時間にいるんだ。お兄ちゃんは知らない町に迷い込んで、気が付いたらそこにいたって言ってた」
「それ、どういう意味や…?」
案の定、風夏が困惑したような声を漏らした。
レンは俯く。自分だってまだこれがどういうことなのか、分かってるわけじゃない。
ちゃんと説明できるほど知識を持っているわけじゃない。
ふと、風夏が思い当たったように、小さく声を上げた。
「そういや、竜司は昔そういうん好きやったなぁ。押入れの中が別世界につながっとるとかそうゆうん」
自分の記憶に納得するように何回か頷いている。
「ウチもな、気が付いたら見覚えない変なとこにおったことあるわ。あれは夢や思うてたんやけど、ほんまにそうゆうことあるんやなぁ」
「………え?」
今度はレンが呆気に取られる番だった。
どうやら急激に風夏の気持ちはレンの話を信じる方向に転がっているらしい。
あまりに急激すぎて付いていけずに首を傾げているレンの前で、風夏が勢いよく立ち上がる。
「あんた、竜司のおるところに行けるんか?そやったら案内してな」
「え、え…?」
手を掴まれ、展開に付いていけないまま引っ張られた。
レンは引っ張られながらもう一度、風夏の顔を見上げる。
どういうわけかすでに彼女の瞳には困惑も疑念も微塵もなかった。
「………ええ?」
レンはさらに首を傾げた。
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