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ある時代の流れの中に存在した、ひとつの研究施設を軸にしたキャラ紹介と物語。「戻る」はブラウザBackかパン屑リスト使用推奨です
 
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1、「捕縛」

視界一面を白い羽根が覆った。
突然のことに驚いて、思わずレンは後ずさる。
そのかかとが木の根っこの様な物につまづいて、その小さな身体がふわっと宙に浮いた。
「わ、わわわっ?!」
じたばたと手を動かし空気を掻くが、もちろん重力に捕らわれた身体はそれぐらいで止まってはくれない。
ぐるっと視界が回転したような浮遊感に襲われ、一瞬上下の感覚がなくなった。
「…っぅ……」
思いっきりしりもちをつき、レンは呻く。
覚悟した以上に痛い。
涙に滲んだ視界で前を見上げると、転ぶ最初の原因となった白い羽根の持ち主が冷めた目線でこちらを見下ろしていた。
「お前は何だ」
その引き締められていた口がぼそ、と小さな問いを発する。
それが自分に向けられた物だと分かって、レンは慌てて立ち上がった。
そこでようやく、自分の周囲の状景を把握する。
何故か周囲を取り囲むように槍のような長い武器が突きつけられた中に、レンと白い羽根の男は立っていた。


「え、ええと…」
レンはおずおずと切り出す。
あれからレンと白い羽根の男は、小さな部屋ぐらいの広さがある木の洞のようなところに放り込まれていた。
入り口には鉄格子がはまっていて、どうやら囚われたのだと理解する。
男は何も聞こえなかったかのように、どすっと床に座り込んだ。
まったく相手にされていないどころか存在すら無視するような空気に、思わずレンも黙り込む。
黒い髪に黒っぽい灰色の目。服装も黒を主体にしたもので、その中で背中から出ている大きな白い翼が一際目を惹いた。
綺麗だと思う。翼がある人を見るのは初めてだが、レンは事典などでそういう種族が居るのを知っていた。
「…羽根、さわらせてもらっても…いい?」
黙っていると息が詰まりそうになって、レンは手を伸ばした。
鳥の喉を撫でるのと同じ感じだろうか?
ふわふわでなめらかな手触りの記憶が指先に蘇り、少し期待にどきどきする。
その手が翼に届く寸前で手ひどく叩かれた。
「触るな。俺は許可してない」
男はレンのような子供相手にも容赦のない様子で言い捨てる。
その後、急に何かに気づいたように眉を寄せ、レンの顔を凝視した。
「な、何…?」
レンは居心地が悪くなってもぞもぞと身じろぎする。
何かおかしかっただろうか?
男の目を眇めたような顔は迫力があって少し怖い。
「…オッドアイか、お前」
その言葉でようやく男が何を見ていたかを知り、レンは困惑した笑みを零した。
色の違うこの目に偏見を持つ相手を何人も見てきた。
この男もそういう種類なのだろうか?
言葉の意図を求めて、続く反応を窺う。
男はレンの笑みに一瞬考えるような仕草を見せたが、すぐに何事もなかったかのようにごろっと後ろに転がり床に横になった。
そして戸惑うレンを後目に、そのまま黙ってしまう。
「え、あの…」
「…寝といた方がいいぞ、ガキ。もうすぐ煩くなるからな」
次に男の口から出たのは、まったく関係のないそんな言葉だった。
レンは全然状況が把握できず、困った顔でその場に腰を下ろし膝を抱く。
一体ここはどこで、これから何が起ころうとしているのか。
いつも以上に困惑しながら、レンは時が動くのを待っていた。

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