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ある時代の流れの中に存在した、ひとつの研究施設を軸にしたキャラ紹介と物語。「戻る」はブラウザBackかパン屑リスト使用推奨です
 
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3、「脱走」

後ろ手に蔦のようなもので手を拘束され、男とレンは歩かされていた。
あれから一晩が過ぎ、すでに陽は昇り頭上で冬の弱々しい光を投げかけている。
周囲にいる人間の数は相手が男と少年の2人にしては物々しい程で、今が尋常な事態ではないのを示していた。
「お兄さん…今からどうなるのか分かる…?」
こっそりと隣を歩く男に問う。
いまだに意味のある会話は何一つしていないが、それでも『お兄さん』と呼んだときだけ男の目が僅かに和らぐのをレンは気づいていた。
「……さあな」
返る言葉はそっけない。
「処刑か尋問か…まあ、こいつらに慈悲とかは期待しない方がいいだろうな」
あまり穏やかでないその単語に、レンは表情を強張らせた。
「…僕、何もしてないけど……」
ただ落ちて来ただけなのだ。それなのにどうしてこんなことになっているのか、本当にワケが分からない。
ようやく男がレンにまともに視線を向ける。
すっとその黒っぽい灰色の目がすうっと細められる。
「…お前は翼がない、からな。案外、俺の一味とでも思われてるのかもしれん」
「そんな?!この世の中に翼がない人なんていっぱいいるよっ?」
思わずレンは声を上げていた。
むしろ有翼人と呼ばれる彼らの方が数は少ないのじゃないだろうか?
この世界には…レンの居た世界にはそれは様々な種族が居たが、街で見かける人の数は普通の(?)人間の容姿をした人が圧倒的に多かった。
それともこの世界では違うのだろうか?
前に訪れたことのある獣人が多い世界のように、ここは有翼人が幅を利かせる世界なのだろうか?

「……ああ。この村から出れば、ほとんどの地でヒュームの方が多いだろう。だが……」
男はそれ以上は言葉にしなかった。
ヒューム、というのが自分のように翼を持たないただの人間のことのようだ。
レンは首をぐるっと巡らせて、周りの人たちを見る。
中には昨日取り囲まれた時に見た顔もちらほらと居る。
ただ総じて共通するのはやはり、翼。
男が続けかけた言葉の先はそういうことだろうと想像がついた。
「出ろ」
周囲の歩みが止まり、ぐいっと前方に突き出されて、思考を飛ばしていたレンはビックリする。
そこは少し大きめの広場のようなところだった。
篝火が焚かれ、物見をするように有翼人たちが集まっている。
その中には母親らしき女性やその子供、杖をついた老人の姿もあった。
昨日鉄格子の向こう側に来た老人が、静かに進み出てぐいとレンの横に居る男の顎を引き上げる。
「どこに隠し…ぐあっ」
問い詰める言葉は途中で鈍い呻きに変わり、老人は足を払われてすっ転んだ。
男はその原因となった長い足を準備体操でもするように軽く振り抜き、勢いをつけて身体を反転させてすぐ傍らの護衛も蹴飛ばす。
「ガキ!とりあえずどこでもいいから走れ!」
叱咤するような男の声に感覚で身体が動き、レンは物見集団の母親たちが集まる一角へと駆け出した。
後ろで罵声のような声と呻き声、鈍い打撃音などが混ざり合って聞こえる。
一瞬、加勢しなくてもいいのかという迷いが、レンの足を止めた。
背後に迫り来る気配と、男の呪うような罵りを聞きながら、慣れた魔術の構成を咄嗟に組み、ろくに状況も見ず背後に向かって解き放った。
魔術の風が周囲を切り裂いた。

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