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ある時代の流れの中に存在した、ひとつの研究施設を軸にしたキャラ紹介と物語。「戻る」はブラウザBackかパン屑リスト使用推奨です
 
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3、「錯覚」

「…そういうこと」
シェリンが目を細めながら、笑みを零した。
くす、くす…と笑いながら3歩分の距離を縮めてくる。
「私の研究を奪いに来たのね。理由は、あなたたちの創造主を殺された復讐ってとこかしら?」
すうっと伸ばされた手が、レンの頬に触れた。
その手はゾクリとするほど冷たい。
「それとも…今度はあなたたちが創造主を『複製』するつもり?」
「…そんなの間違ってるよ」
レンはその手を振り払わずに、彼女の顔を見上げた。
「失うのはたしかに悲しいことだけど…、だからって同じ形のものを作ろうとするのは間違ってるよ」
シェリンの蒼い瞳が冷たさを帯びる。
ぐっと頬に触れている手に力が籠もった。
「…何も知らないくせに……ただ綺麗事だけの正論なんていらないわ」
そのまま手がレンの顎を滑り、喉へと回る。
気管が圧迫され、息が詰まった。
「……っ…!」
反射的に喉にかかる手を外そうと掴むが、子供の力では外すどころか緩めることも出来ない。
喉の奥でぐうっと呻きが殺され、視界がチカチカと点滅した。
「何をしてるんですかっ?!」
と、唐突に飛び込んできた声とともに、シェリンの身体が突き放される。
急に空気が肺に入って来て、レンは咳き込んだ。
苦しさに滲む視界を前に向ければ、自分とシェリンの間に立ち塞がる様に立っている青年の後姿が飛び込んでくる。
緩やかに束ねられた青銀色の髪、細身でどこか頼りない印象の背中。
「こんな子供に手をかけるなんて…あなたたちはやっぱり変わってないんですね」
静かな中に怒りが感じられる口調と、その姿が記憶に残るものと重なった。
「……セイン、さん」
レンはぼそと青年の名前を呟く。
やはり間に合わなかった。
今回こそは、もしかしたらと思ったのに。
「あなたたちをこのままにしておくわけにはいきません…。
これ以上私たちみたいな存在が造られる事のないように」
怒りと同時に悲しみのような何かが感じられる青年の声に、シェリンの嘲るような笑い声が重なる。
「何か勘違いしてるわね。私たちは…少なくとも私はあなたたちみたいな失敗作を作るのが目的じゃないの。目的のものを作るためにゴミが出るのは仕方ないことでしょ?そうやって人間は生きているのよ」
当たり前のことを語るように言葉を継ぐ彼女を、レンはセインの背中越しに眉根を寄せて見つめた。

どうしてこの人はいつもこういうことが言えるのだろう?
言葉を向けられた当人でなくても、あまりいい気はしないその言葉に、当人がどんなに傷つけられるのか…気づかないの?

「あなたたちはただのバグなの。たまたま人と同じ形を取ってはいるけど、ただそれだけよ。怒りや悲しみを感じたとしてもそれは錯覚でしかないわ。そう感じていると思っているだけなのよ」
火が迫っているのか、熱気が次第に部屋に立ち込めてくる。
ゆら、と空気が揺らいだ気がした。
「私たちは……私たちだって生きています…!」
セインが声を絞り出すように叫ぶ。
「悩んだり笑ったり誰かを好きになったり…。
確かに出来損ないかもしれませんけど……でも、生きてるんですっ!錯覚なんかじゃありません!」
「そうだよっ!」
レンも声を張り上げた。
自分は造られた人間じゃないから本当のことは分からないけど、これまでに見てきたセインの色々な感情が錯覚なんて信じられない。むしろ誰よりも感情豊かに見えたのだから…。
「あなたの方こそ、そう思い込んでるだけなんじゃないの?
僕にはセインさんの方がよっぽど人間に見えるよ!」
セインが少し驚いたような顔で振り向いてくる。
レンは微笑んで頷いてみせた。
視界の端でシェリンが苛立った色を浮かべているのが見えた。

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