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ある時代の流れの中に存在した、ひとつの研究施設を軸にしたキャラ紹介と物語。「戻る」はブラウザBackかパン屑リスト使用推奨です
 
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今期GrbのラストSSです。
アッサムさんの書かれたラスト設定をそのまま受け継いで、メイの心情を中心に書いてみました。
(アッサムさんのブログ「闇を砕く拳」へはこちら
こちらで公開されている「lastdance」というお話の裏話的な仕立てになっています)

これでメイを中心にするお話は終わりなのですが…あれやこれはどうなったの?兄貴はどうなったの?など、実はまだ謎のままの部分も多々あったりします。
それはまたそれで、別キャラの誰かのお話にこっそり登場していることもあるかもしれません。
というか多分書くと思います(笑)。

来期はすでに別キャラでの登録が決定、メイは結婚して冒険者自体から引退となります。
メイにお付き合いいただいた方、本当にありがとうございました!
とても楽しかったです。メイは幸せ者です。
拙くはありますが、ラストSS少しでも楽しんでいただけたら幸いです。



散りばめられた透明な宝石がきらりと光を反射する。
飽きずに何度もそれを眺めながら、少女は幸せそうに微笑んだ。
少し視線をずらせば、そこに大きくて温かい背中が見える。


もう会えないのかもしれないという思いが何度か過ぎり、その度に胸が冷えた。
ファーネルの街に戻ってきてみれば、まるで戦争のような大きな戦いがあったと聞き。
そして次々に戻ってくる冒険者達の中に、必死で彼の姿を探した。
勝利に酔いしれる冒険者が溢れ、お祭り騒ぎのような賑わいを見せるファーネルの街を駆けずり回ったが、それでも彼を見つけることは出来なかった。
たくさんの冒険者たちが参加した戦いは熾烈を極め、負傷者も大勢居たらしい。
そう聞いて、負傷者を治療したというプリーストをあたり、重傷者を収容したという医療施設も回った。
だが彼を…アッサムさんを見つけることは出来なかった。
「…どこに居るのさ……。私が遅かったなんて思いたくないよ…。あなたがもうどこにも居ないだなんて思いたくないよ…!」
うっすらと雪が積もり始めた石畳に涙が落ちる。
こんなことになるなら、この街を離れるんじゃなかった。
待ってくれているアッサムさんに、自分がずっと甘えていたのだとそう気づく。
絶対に離れないと…側に居てくれるのだと思っていた。
それがどんなに自分勝手で甘い考えだったか気づきもしないで…。
メイリーンは大きく首を左右に振る。
ぐっと力を込めて自分の手首をもう片方の手で握りしめた。
「まだ…今はこんなこと考えてる場合じゃないよね…っ。…探さなきゃ…絶対に……絶対にアッサムさんは生きてる…!」
悪い想像に崩れそうになる足を叱咤しながら、まだ捜していない場所を何かを知っている人を求めて歩き出す。
そんなメイリーンをあざ笑うかのように、舞う雪が次第に強さを増していった。

「え、それって本当っ?!」
ようやく得た情報は、本当に小さな手がかりだった。
だがそれは彼女にとっては闇の中の光明だった。
アッサムさんは重傷を負って、戦線を離脱した、と…治療しているプリーストがわずか目を離した隙に姿を消してしまったが、確かに生きていた、と。
それ以降彼の姿を見たものはなく、捜索は続いているがまだ見つからないと言われたが、それでもメイリーンにとってはその情報は何よりも嬉しいものに違いなかった。
少なくても戦いの中で命を落としてはいない。
どうして姿を消したのかとか怪我の具合はどうなのかとか聞きたいことも不安もたくさんあるけれど、それでも生きていてくれれば…そうすれば……。
「『もし帰って来たら、煉瓦亭に寄ってくれ』…」
郵便屋に渡されたメモの中身をそっと音に乗せる。
生きているならきっと戻ってきてくれる。
あの思い出がたくさん詰まった場所へと戻ってきてくれるはずだ。
「ファーネルに戻ってきた時に決めたんだ…。今度は私が待つ番だって。…ずっと待ってくれていたあなたを、今度は私が待つよ。だから…帰ってきて。私のことを忘れてしまっていても構わない。その時は私が頑張って、絶対に思い出させる…私をもう一度好きになってもらうから…。だから……帰ってきて…」
祈るような気持ちで、煉瓦亭へとメイリーンは足を向けた。
煉瓦亭を覗いてそこに彼の姿がないことに落胆を覚え、同時に気持ちを立て直す。
今自分に出来るのは待つこと…。
何があってもアッサムさんの言葉を信じて、ここで待ち続ける。
何日でも何週間でも何ヶ月でも…ずっと待ってる。
挫けそうになる足を叱咤しながら、メイリーンはカウンター席へと腰を下ろした。
毎日ギルドに新しい情報が来ていないかを確認し、それ以外はほとんど一日を煉瓦亭で過ごす。
そんな日々が続き、そうして…何週間かが、過ぎた。

今から思えば、あれはいつもこの季節に姿を見せる偽者だったのかもしれない。
それとも本物が奇跡的に姿を現したのかもしれない。
もしかしたら、すべてはただの夢だったのかもしれない。
あの時、赤い服に白い髭のお爺さんを見かけたような気がしたことは誰にも話していない。
でも、それがたとえ偶然だったとしても、願い事は叶った。

待ちわびた優しい目と温かい声に、いとも簡単に涙腺がまた緩んだ。
「アッサム……さん?」
信じられなくて、少しでも目を逸らせば消えてしまう気がして、霞む視界で彼の姿を捉え続ける。
少しでも確実を得たくてその胸の中に飛び込めば、しっかりと力強い腕が抱きとめてくれた。
それからの話は尽きなかった。
思わず責めるような言葉を口にすれば、飾らない謝罪の言葉が返ってくる。
本当は謝らなくちゃいけないのは自分も一緒だ。
何度も不安にさせたかもしれない。心配させたかもしれない。
それでも彼もまた信じて待っていてくれたのだから…。
これからの約束の印に目の前に差し出された小箱の中身に、また涙が溢れた。
答えはとっくに決まってる。
もう、離れない。これからもずっと一緒に、側に居る。


2人で寄り添いながら煉瓦亭を出て、メイリーンは舞う小雪を見上げる振りをしながらちらりと彼の顔を見た。
そういえばまだ大事な言葉を言ってなかったことに気づいて、目を瞬かせる。
視線に気づいたのか見下ろしてくる彼に向かって、今度はとびきりの笑顔を返した。
「ただいま。それから……おかえりなさい…!」
これからは毎日この言葉を忘れずに。
この先の時間を共に生きていく。
メイリーンの指で、その誓いの証がきらりと雪明りを反射して煌めいた。

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