ある時代の流れの中に存在した、ひとつの研究施設を軸にしたキャラ紹介と物語。「戻る」はブラウザBackかパン屑リスト使用推奨です
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毎度、ジーンよ。
今日は背後から渡された指令を読み上げるわね。
「01 もしも性別が逆だったら」…あら、いきなりキワモノが来るわね。
でもセンが女性だったとか言われても、別にそう驚く気もしないんだけど…。
実は案外…なんてこともあるんじゃないかと思うわよ?
この指令は『番外編用12のお題~もしも編~』
「ing+be...」さま(http://xy765.web.fc2.com/)からお借りしてるわ。
あくまで、もしもの話だからとりあえず本気にしないでね。
まあ、たとえ本気にしても、あたしに被害はないからいいんだけどね。
**********
「ふぅ……」
センは困ったように眉を潜めた。
「まさか入り口の近くで、竜に遭うとは……」
戦闘でやや焦げた外套を前に手繰り寄せて、僅かに身を震わせる。
何故かこの島に来る前からずっと付いてくる白猫のせいで、えらい目に遭ったものだ。最初まだ与しやすそうだと考えていた西側の通路とは、全く逆方向に行く羽目になるなど誰が想像できたというのか。
センはずり落ちかけた眼鏡を軽く指で押して直した。
ふと足元を見ると、思いの他原因となった白猫がしょんぼりしているのに気づき、思わず苦笑が零れる。
「…これに懲りたら、勝手にあちこち行くな?」
屈んで、少し乱暴にわしゃわしゃとその頭を撫でてやる。
と、その拍子に寄せていた外套の合わせ目が緩んで、センは再び慌ててそれを手繰り寄せる羽目になった。
見られたかと一瞬背筋が冷える。
さすがに入り口のところまで戻ってきただけあって、周囲に人の姿は多かった。
だが逆にそれが幸いしたのか、特にセンに気を留めていた相手は居ないようだ。
「……どこかで直さないと…」
やや赤らんだ頬を隠すように俯かせ、押さえ切れないため息を落とす。
気に入っていた藍のローブには、最初の竜の一撃で無残な掻き傷が出来ていた。日に焼けていない白い肌がちらちらと覗く。
センはもう一度外套をぎゅっと合わせ直した。
「そこの人、どうかしたの?元気が無いなら僕をおたべよ!」
「……っ?!」
いきなり後ろから話しかけられて、センはずざっと飛び離れた。
悲鳴を押し殺せたのは奇跡といってもいい、そんなタイミングだった。
ゆっくりと後ろを振り返ると、そこに居たのは大きな…甘酸っぱい匂いの……?
「……蒸しケーキ…?」
思わずぼそりと呟きが零れる。
料理をしている卵から魔物が出現したり、杖が喋ったりするような世界だから何があっても不思議は無いと思っていたが、さすがに食べ物に喋りかけられるのは初めての経験だった。
「お腹が減っているのかい?それとも疲れたのかい?
遠慮はいらないよ。僕をおたべよ!」
それはしきりと自分を勧めてきた。
「いや、その……」
うっかり無防備に外套が緩んでいたことに気づき、それを何気なくかき寄せながらセンは言葉を探す。
「すまないが、私は甘いものは苦手で…」
動揺していたこともあったのか、出た言葉は思いの他ストレートだった。
蒸しケーキのつぶらな目が残念そうな色を放ったような気がして、何故か後ろめたくなる。
「そうか、それはざんね「い、急ぐので私はこれでっ」
何か言葉を続けようとするのを遮るようにして足下の猫を前に抱え、センは遺跡の外に出る魔方陣へと飛び乗った。
「……ごめん」
ふわっと身体が軽くなり外へと転送されるのを感じながら、謝罪の呟きが落ちる。
貰っておいて、誰かにあげた方がよかったのだろうか?
だが、それはそれで逆に申し訳ない気もする…。
「あの…」
考え込んでしまっていたセンは、声を掛けられてハッと我に返った。
どうやら遺跡の入り口に佇んでいたらしい。
その視線が自分に向いていることに気付き、自分の格好を自覚して頬が熱くなる。
「う、うわ…す、すまない……!」
猫を抱いていてまだ良かったとやや安堵しながら、センは逃げるように野宿しているテントの方へ走り出した。
……根本的に手先を使うことが苦手なセンが、結局服を新調する羽目になったのはまた別のお話。
こうして遺跡の3日目は過ぎていった。
**********
あっ、センの反応とかちょっと大げさにして女性っぽくしたけど、内容は本当にあったことよ。
途中の蒸しケーキは同じ場所に居て、レンタル宣言にも加入しているE-No.1266 いのちさんをお借りしたわ、とメタ的なことも付け加えておくわね。
とても印象的な方で、お借りしやすかったわ。ありがとうー!
今日は背後から渡された指令を読み上げるわね。
「01 もしも性別が逆だったら」…あら、いきなりキワモノが来るわね。
でもセンが女性だったとか言われても、別にそう驚く気もしないんだけど…。
実は案外…なんてこともあるんじゃないかと思うわよ?
この指令は『番外編用12のお題~もしも編~』
「ing+be...」さま(http://xy765.web.fc2.com/)からお借りしてるわ。
あくまで、もしもの話だからとりあえず本気にしないでね。
まあ、たとえ本気にしても、あたしに被害はないからいいんだけどね。
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「ふぅ……」
センは困ったように眉を潜めた。
「まさか入り口の近くで、竜に遭うとは……」
戦闘でやや焦げた外套を前に手繰り寄せて、僅かに身を震わせる。
何故かこの島に来る前からずっと付いてくる白猫のせいで、えらい目に遭ったものだ。最初まだ与しやすそうだと考えていた西側の通路とは、全く逆方向に行く羽目になるなど誰が想像できたというのか。
センはずり落ちかけた眼鏡を軽く指で押して直した。
ふと足元を見ると、思いの他原因となった白猫がしょんぼりしているのに気づき、思わず苦笑が零れる。
「…これに懲りたら、勝手にあちこち行くな?」
屈んで、少し乱暴にわしゃわしゃとその頭を撫でてやる。
と、その拍子に寄せていた外套の合わせ目が緩んで、センは再び慌ててそれを手繰り寄せる羽目になった。
見られたかと一瞬背筋が冷える。
さすがに入り口のところまで戻ってきただけあって、周囲に人の姿は多かった。
だが逆にそれが幸いしたのか、特にセンに気を留めていた相手は居ないようだ。
「……どこかで直さないと…」
やや赤らんだ頬を隠すように俯かせ、押さえ切れないため息を落とす。
気に入っていた藍のローブには、最初の竜の一撃で無残な掻き傷が出来ていた。日に焼けていない白い肌がちらちらと覗く。
センはもう一度外套をぎゅっと合わせ直した。
「そこの人、どうかしたの?元気が無いなら僕をおたべよ!」
「……っ?!」
いきなり後ろから話しかけられて、センはずざっと飛び離れた。
悲鳴を押し殺せたのは奇跡といってもいい、そんなタイミングだった。
ゆっくりと後ろを振り返ると、そこに居たのは大きな…甘酸っぱい匂いの……?
「……蒸しケーキ…?」
思わずぼそりと呟きが零れる。
料理をしている卵から魔物が出現したり、杖が喋ったりするような世界だから何があっても不思議は無いと思っていたが、さすがに食べ物に喋りかけられるのは初めての経験だった。
「お腹が減っているのかい?それとも疲れたのかい?
遠慮はいらないよ。僕をおたべよ!」
それはしきりと自分を勧めてきた。
「いや、その……」
うっかり無防備に外套が緩んでいたことに気づき、それを何気なくかき寄せながらセンは言葉を探す。
「すまないが、私は甘いものは苦手で…」
動揺していたこともあったのか、出た言葉は思いの他ストレートだった。
蒸しケーキのつぶらな目が残念そうな色を放ったような気がして、何故か後ろめたくなる。
「そうか、それはざんね「い、急ぐので私はこれでっ」
何か言葉を続けようとするのを遮るようにして足下の猫を前に抱え、センは遺跡の外に出る魔方陣へと飛び乗った。
「……ごめん」
ふわっと身体が軽くなり外へと転送されるのを感じながら、謝罪の呟きが落ちる。
貰っておいて、誰かにあげた方がよかったのだろうか?
だが、それはそれで逆に申し訳ない気もする…。
「あの…」
考え込んでしまっていたセンは、声を掛けられてハッと我に返った。
どうやら遺跡の入り口に佇んでいたらしい。
その視線が自分に向いていることに気付き、自分の格好を自覚して頬が熱くなる。
「う、うわ…す、すまない……!」
猫を抱いていてまだ良かったとやや安堵しながら、センは逃げるように野宿しているテントの方へ走り出した。
……根本的に手先を使うことが苦手なセンが、結局服を新調する羽目になったのはまた別のお話。
こうして遺跡の3日目は過ぎていった。
**********
あっ、センの反応とかちょっと大げさにして女性っぽくしたけど、内容は本当にあったことよ。
途中の蒸しケーキは同じ場所に居て、レンタル宣言にも加入しているE-No.1266 いのちさんをお借りしたわ、とメタ的なことも付け加えておくわね。
とても印象的な方で、お借りしやすかったわ。ありがとうー!
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