ある時代の流れの中に存在した、ひとつの研究施設を軸にしたキャラ紹介と物語。「戻る」はブラウザBackかパン屑リスト使用推奨です
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剣戟、そして魔法の弾ける音。
「あぷりるさん!」
セインはそこにおそらく彼が一番大切に思っている少女の姿を見つけて、慌てて駆け寄った。
忍びたちがざっと飛び退るように道を開ける。
「アプリル…やっぱり来たのか」
エルディスがあきらめたように笑った。
彼も。そしてセインもまた分かっていた。
どんなに止めてもそれでおとなしく下がっている少女じゃないことを。それでも……。
「それでも私はあなたを、巻き込みたくはなかったのに……」
セインは困ったように微笑んだ。
アプリルがそんなセインをキッとにらむ。
「止めたって参戦するよ!ボクは…大切な人たちとともに歩めるように…足手まといになりたくなくて…強くなろうとしていたんだから……!」
大切なもの、大切な人を守るためにここに居る。
それはセイン自身が戦を起こすことになった理由でもある。
それを惜しむことなく伝えられて、セインは何も言えなくなった。
「セインさん、アプリルさんは必死でしたよ。
それに巻き込むなんて気にしないでください。私は巻き込まれたなんて思っていませんから」
「くうぱあさん……」
セインはもう1人そこにいた人間に視線を流す。
いつもおどけている彼が、ふと見せる真剣な表情。
今もまた、彼はその表情をしていた。
「そうですね……。気になっていたんですが、私たちは自分の意思でここに居るんですよ。セインさんが巻き込んだのではありません」
後ろからセティも静かな声を発する。
セインの紫の瞳が揺れた。
『自分の意思』。
それはセインにとってひとつの鍵となる言葉だった。
『お前はお前の意思で動け』
セインは俯く。
師匠の言葉。ただ1人の弟子に送る最後の教えだと、別れ際にそう言って笑っていた…。
彼らに何と返していいか分からない。
だが、嬉しいと。そう思えて、胸がいっぱいになった。
その時。
ひゅっと鋭い音がして、忍びの一人が崩れおちた。
一瞬の間。
「……おまえ、裏切るのか?」
周囲を取り囲んでいた忍びのうち数人が、黒系統の忍装束に身を包んだ赤茶色の髪の青年に向かい、武器を構える。
「裏切る?」
右目は薄い青色。左目はそれよりも色の濃い藍色。
青年は静かに問い返した。
「俺はお前たちの仲間じゃない」
指の間に挟んだ長く細い針がきらめく。
「久遠さん?」
エルディスの声に応え、彼はセインたちの方を見た。
「今、セインさん狙われてましたよ。油断しちゃいけません」
殺気立つ忍びの中を歩き、近づいてくる。
その歩みを止めようとした忍びが、すかさず放たれたセティの魔法によって足止めされた。
「里の入り口のところにいた、忍びに聞きました。戦う…のだそうですね」
セインの前まで来て、久遠は口を開く。
「それは何故ですか? 何故、あなたは戦いを始めたのですか?」
セインは色の違うその瞳を見返した。
セティとはまた違った静けさを秘めた双眼。
「私は…」
話をする2人を守るように、くうぱあやエルディスが前に立つ。
いつでも魔法を使えるように、セティとアプリルも構えている。
「私は」
セインは一息、息を吸った。
「大切なものを守りたい」
強い意志を持った言葉。
「絶対に壊させたりしたくないんです」
「……それには相当の覚悟が必要ですよ?」
確認するような久遠の言葉に、セインはゆっくりと頷く。
それを見届けて、久遠は視線を和らげた。
「今後、その信念を崩さないようにお願いします。
そうすれば、周りには協力してくれる人が沢山いるのですから。そして、心配してくれる人も」
その言葉にセインは微笑う。
「はい」
「貴方が里から去ったことで涙を流した人が何人いるか……。
もう、あんなことはなしにしてくださいね」
「分かっています」
今ここに集まってくれた人たちがその証明。
始めた時は1vs80の戦い。
それがいつの間にか6vs80の戦いになった。
数ではまだ遥かに及ばないが、それでも。
「…恐れたりはしません」
心は定まっている。
自分の意思のもとに―――。
「あぷりるさん!」
セインはそこにおそらく彼が一番大切に思っている少女の姿を見つけて、慌てて駆け寄った。
忍びたちがざっと飛び退るように道を開ける。
「アプリル…やっぱり来たのか」
エルディスがあきらめたように笑った。
彼も。そしてセインもまた分かっていた。
どんなに止めてもそれでおとなしく下がっている少女じゃないことを。それでも……。
「それでも私はあなたを、巻き込みたくはなかったのに……」
セインは困ったように微笑んだ。
アプリルがそんなセインをキッとにらむ。
「止めたって参戦するよ!ボクは…大切な人たちとともに歩めるように…足手まといになりたくなくて…強くなろうとしていたんだから……!」
大切なもの、大切な人を守るためにここに居る。
それはセイン自身が戦を起こすことになった理由でもある。
それを惜しむことなく伝えられて、セインは何も言えなくなった。
「セインさん、アプリルさんは必死でしたよ。
それに巻き込むなんて気にしないでください。私は巻き込まれたなんて思っていませんから」
「くうぱあさん……」
セインはもう1人そこにいた人間に視線を流す。
いつもおどけている彼が、ふと見せる真剣な表情。
今もまた、彼はその表情をしていた。
「そうですね……。気になっていたんですが、私たちは自分の意思でここに居るんですよ。セインさんが巻き込んだのではありません」
後ろからセティも静かな声を発する。
セインの紫の瞳が揺れた。
『自分の意思』。
それはセインにとってひとつの鍵となる言葉だった。
『お前はお前の意思で動け』
セインは俯く。
師匠の言葉。ただ1人の弟子に送る最後の教えだと、別れ際にそう言って笑っていた…。
彼らに何と返していいか分からない。
だが、嬉しいと。そう思えて、胸がいっぱいになった。
その時。
ひゅっと鋭い音がして、忍びの一人が崩れおちた。
一瞬の間。
「……おまえ、裏切るのか?」
周囲を取り囲んでいた忍びのうち数人が、黒系統の忍装束に身を包んだ赤茶色の髪の青年に向かい、武器を構える。
「裏切る?」
右目は薄い青色。左目はそれよりも色の濃い藍色。
青年は静かに問い返した。
「俺はお前たちの仲間じゃない」
指の間に挟んだ長く細い針がきらめく。
「久遠さん?」
エルディスの声に応え、彼はセインたちの方を見た。
「今、セインさん狙われてましたよ。油断しちゃいけません」
殺気立つ忍びの中を歩き、近づいてくる。
その歩みを止めようとした忍びが、すかさず放たれたセティの魔法によって足止めされた。
「里の入り口のところにいた、忍びに聞きました。戦う…のだそうですね」
セインの前まで来て、久遠は口を開く。
「それは何故ですか? 何故、あなたは戦いを始めたのですか?」
セインは色の違うその瞳を見返した。
セティとはまた違った静けさを秘めた双眼。
「私は…」
話をする2人を守るように、くうぱあやエルディスが前に立つ。
いつでも魔法を使えるように、セティとアプリルも構えている。
「私は」
セインは一息、息を吸った。
「大切なものを守りたい」
強い意志を持った言葉。
「絶対に壊させたりしたくないんです」
「……それには相当の覚悟が必要ですよ?」
確認するような久遠の言葉に、セインはゆっくりと頷く。
それを見届けて、久遠は視線を和らげた。
「今後、その信念を崩さないようにお願いします。
そうすれば、周りには協力してくれる人が沢山いるのですから。そして、心配してくれる人も」
その言葉にセインは微笑う。
「はい」
「貴方が里から去ったことで涙を流した人が何人いるか……。
もう、あんなことはなしにしてくださいね」
「分かっています」
今ここに集まってくれた人たちがその証明。
始めた時は1vs80の戦い。
それがいつの間にか6vs80の戦いになった。
数ではまだ遥かに及ばないが、それでも。
「…恐れたりはしません」
心は定まっている。
自分の意思のもとに―――。
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