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ある時代の流れの中に存在した、ひとつの研究施設を軸にしたキャラ紹介と物語。「戻る」はブラウザBackかパン屑リスト使用推奨です
 
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降りしきる雨の中、土を踏みしめる音と剣戟の音が重なり合う。
目に入る雫をぬぐいながら、淳は焦る気持ちでいっぱいだった。
みすみす目の前でセインをさらわれてしまった。
まだ間に合うかもしれない。今から追えば、まだ間に合うかもしれない。
そんな思いが剣を逸(はや)らせる。
それを見越してか、それとも単なる時間稼ぎなのか、忍びたちは深く打ち合うことを避けているようだった。
雨で手が滑る。
淳は落ち着くように大きく息を吐いた。
剣を握る手に必要以上に力が入りすぎていたのを、ゆっくりと緩和させる。
「これ以上手間取るわけにはいかない…」
自分にも言い聞かせながら。

「…『無式・覇天』!!」

いまだあまり見せたことのない奥義技のひとつ。
ひゅっと走った剣の鋭い切っ先が残像を描き。
数人の忍びの体に吸い込まれる。
受けた忍びの体が揺らぎ、どう…と倒れた。


その合間を縫って走ろうとした淳の前に、しかし、新手が立ちはだかる。
「何だって……っ?!」
その数と手早さにふと、奇妙な違和感を覚えた。
相手方の忍びの数は、確か80人あまりと聞いている。
しかし今までに何人叩いた? セインさんたちだって、これまでに何人か倒しているはずだ。
その時。
「……淳さん?!」
セインの工房の方から、見慣れた顔ぶれが3人現れた。
「んむー、セインさんは一緒じゃないのですか〜」
淳の側に身を寄せるようにしながら、パルクレチュアが困ったように眉を寄せる。
「淳さん、気が付きました?こいつら、絶対普通じゃないですよ」
威嚇するように白い長針を連続で放ちながら、久遠。
「セインさんを見かけませんでした? どこ行っちゃったのかなぁ…」
これはくうぱあ。
淳はもう一度剣の柄を握りなおし、敵の姿を見た。
黒装束に身を包んだ、表情の変化も窺えない影たち。
何故か背中に戦慄が走る。
それを押し殺し、淳は3人に言った。
「セインさんはさらわれちゃいました……。
ここは僕に任せて、皆さんはセインさんを追ってください! 早くっ」


「……分かりました。気をつけてください」
久遠がするっと忍びたちの間をすり抜けた。
その後を追おうとした忍びを足止めする。
「淳さん…また後で会いましょう!」
くうぱあも続いて。
淳はふっと息を吐いた。
間に合ってくれ……。そう願う。
その淳の背中に、とんっと小さな背中が当たった。
「…パルさん?」
「むー、1人では大変ですよ〜」
少女はにこにこと笑う。
「倒しても倒しても湧いて出てくるような相手には、ぽんっと一発〜。私が大きな魔法でも〜」
「こ、この距離だと、僕も巻き込まれるような気がするんですが……」
「あはー、気にしちゃダメです〜」
こんな状況でもまったくいつもと変わらない少女。
それを見て、淳の顔にも自然と苦笑じみた笑みが浮かんだ。
こういう強さもある。
セインの元にはいろいろな強さを持った人間が集まっている。
(セインさん…、あなたは幸せだと思いますよ)
微笑みながら、もう一度武器を構え直す。
雨は少しだけ、その降りを弱めていた……。

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