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ある時代の流れの中に存在した、ひとつの研究施設を軸にしたキャラ紹介と物語。「戻る」はブラウザBackかパン屑リスト使用推奨です
 
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里の鐘が鳴り響く。
1つ、2つ、3つ……。
5つまで数えたところで、淳は数えるのをやめ、目の前の屋敷を見上げた。
久遠を探し、屋敷の周囲を回ってみたが、何の収穫もありそうになかった。
「…それにしても大きいですね」
萱葺きの庵が多い中、平屋とはいえ長の屋敷の大きさは群を抜いていた。
中もさぞかし迷宮のようになっているのだろうと。
さきほど格子越しに中をちらりと覗いた淳はそう思った。
「久遠さんもセインさんもこの中に居るんでしょうか?」
口に出せば、それは信憑性を増して聞こえる。
中に踏み込むべきか少し迷いながら、同じく久遠を探して別れたくうぱあの、別れ際の言葉を思い出していた。
『1人で戦うのは危険ですよ…。久遠さんだってそれは分かっていると思いますがね』
確かに。
敵方の異様な建て直しの早さ、死をまったく恐れぬような不気味さに、戦い慣れした勘が警告を鳴らしていた。
それに里長と呼ばれる人物の不可思議なまでの余裕。
「動くのは危険でしょうか? せめてもう1人誰か居れば……」

「んっく、淳さん、何でこんなところに居るですか〜?」
突然、背後からかけられたのんびりした声に、淳は思わず飛び退った。
「パ、パ、パルさん?!」
そこに再び小柄な少女の姿を見る。
とりあえず敵ではなかった事に僅かに安堵の息を漏らしながら、淳は元の場所に戻った。
「パルさんこそどうしてここに……危ないですよ?
というか…気配をまったく感じなかったんですが……」
内心冷や汗を流しながら言う彼に、パルクレチュアはにっこりと笑う。
「気のせいですよー」
「………」
それに対して、淳は何も言うすべを持たなかった。
気を取り直して屋敷をもう一度見上げる。
「…パルさん、どう思いますか?」
「忍さんたちのことですか〜? それとも〜…」
パルクレチュアが落ち着いた静かな目で、同じように屋敷を見上げた。
ふと耳に届いたのは魔法の爆発音で。
やはり屋敷の中に仲間達の誰かが居るのだろうと知れる。
「ガビィ先生もこの中なんでしょうか〜」
パルクレチュアが漏らした一言に、淳は不思議そうに少女を振り返った。
「ガビィさんもこの里に来ているんですか?」
「うふふ〜。さっきは3人でおっかけっこ楽しかったです〜」
「………」
3人のうちもう1人が誰かという事は聞かないで、微妙に目をそらす。
(やはりジキルさんは料理される運命なのでしょうか……)
合同結婚式の時もそうだった。
淳も出席していたからよく覚えている。
…食材だと日頃から言及されてやまないジキルの冥福を、淳はひそかに祈った。
「…ということはジキルさんもこの中に…?」
屋敷を三度見上げた視界の端で、何かがきらっと光る。
そして一瞬遅れて。
ドーンっ!
重い音が地面を揺らした。
「あわわわ、な、何ですかぁ〜?」
続いて2発、3発。
屋敷の壁が剥がれ、そのいくつかが淳たちの方へ落下してくる。
「危ないっ!」
数の多さに小さく舌打ちして、淳は剣を抜き放った。
「『零式・陽炎』っ!!」
頭上に落ちてくる瓦礫に、飛び込むように剣を振るいそれらを一掃する。

ごげんっ。
傍らで聞こえた鈍い音に、思わず冷や汗が流れた。
恐る恐る振り返れば、ひときわ大きな瓦礫をしっかりと頭上で受け止めているパルクレチュアの頭に別の瓦礫がヒットしていた。
「パ、パルさん…?!」
ふらふらと後ろに倒れかかる少女の手にある大きな瓦礫を、とりあえず粉砕しそれ以上被害が拡大するのを防ぐ。
「んむ〜、ありがとうございますー…」
「パルさんに何かあったら、キリトさんやFCのメンバーに殺されるじゃないですか〜…」
そうしている間もたえず爆発音は収まらず、瓦礫の数も増えていった。
「……ひとまずこの場は離れましょう」
屋敷で何が起こっておるのか気になりながら、淳はそう選択する。
時は暁9つ過ぎ。
だいぶと小降りになった雨は、それでもなおしとしとと降り続いていた。

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