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ある時代の流れの中に存在した、ひとつの研究施設を軸にしたキャラ紹介と物語。「戻る」はブラウザBackかパン屑リスト使用推奨です
 
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「あれ?ジキルじゃないか」
屋敷に入り込んでいたくうぱあは、向こう側の廊下を横切っていった人影に目をとめた。
「何やってんだ、あいつ」
「うにゃーーーー!?」
ジキルの悲鳴がこだまする。
その横を中華包丁が掠めて飛んだ。
そのすぐ後を追いかける、金色の機械兵。
「ふぅん」
くうぱあの口元にニヤリと笑みが浮かんだ。
「困りますねぇ。食材の売買は私を通してもらわないと」
食材(ジキル)捕獲用の袋を握りしめる。
ジキルの着ぐるみに付けてあった発信機は、発見されて壊されたのか少し前から反応が消えていた。
というか一度、着ぐるみ本体が何らかの理由で損傷したようだ。
もっとも着ぐるみ自体は多少の損傷は自動的に修復するようになっている、らしかった。
同じパーティの先生が作ったものだが、目からビームが出たり、四次元ポケットも付いているというから、何ともすごい代物だ。


「たぶんこっちに…」
久遠を探して先ほどから屋敷の中を歩き回っていた事もあり、だいたいは中の間取りはつかめてきていた。
(まあ、久遠さんを探すというのは名目かもしれませんけどね…)
自分でそう思って、くうぱあはひとり苦笑を零す。
単独で踏み込むのは危ないと淳を止めたのは彼だ。
その自分がこうして連れもなく、屋敷へと踏み込んでいる。
(とりあえず私はまだ、里長に会ったことはないから…少し情報が欲しいところですねぇ)
入り組んだ廊下の先に、一段だけ高くなっている通路が見えてきた。
そちらから聞こえる足音とジキルの声、罠の作動したらしい音…。
途中、刃を交えるような音が聞こえるのは、忍びと遭遇したためか。
そちらの通路から、ひょいっとジキルが飛び込んできたのを見て、思わず再びニヤリと笑みが漏れる。
通路の向こう側にいるらしいガビィの動向を探っているジキルは、後ろにいるくうぱあに気づいていないようだった。
(大事な商品はちゃんと管理しておかないとねぇ…)
新しい発信機とずだ袋を後手に隠し、一見無警戒に近づく。
「や♪」
「く、くうぱあ?!」
驚いたように振り向いたジキルの視線が、瞬時に後ろに隠されたくうぱあの手に落ちた。
「何か持ってる?」
(おお、学習してるよ)
警戒しているジキルの様子に、さらに笑みが零れそうになるのを抑え、くうぱあは極力平静に見せる。
「いや、たいしたものじゃないよ」
「うにゃあ!」
ぽふ。
繰り出されたねこぱんちに、隠していた袋が落ちた。
「………」
ジキルにじと目で見られ、多少引きつった笑みを浮かべながら、誤魔化すようにその肩を叩く。
「ちょっとしたおちゃめじゃないか。私は緊張をほぐそうとだねぇ…」
「 …(ぜったい嘘だ…」
通路の向こう側で、ジキルを見失っていたらしいガビィが近づいてくる音がした。
(ふむ…発信機は正常に動作してるみたいだね)
さっき肩を叩いた時に発信機を取り付けたくうぱあは、壁の方を向いてこっそりと邪笑する。
「まあ、頑張れ」
「……」
疑わしげにくうぱあを見ていたジキルが、ふと気が付いたように壁をじっと見つめた。
「ん? なんでこんな所にヒモが…?」
「お、おい、それって……」
ぐいっ。
くうぱあがあわてて止めようと声を上げたのと同時に。
いつかセインの庵でやったように、ジキルは無警戒にヒモを引く。
パカッと2人の足元の床が口を開けた。
「にゃぐ?!」
「う、うわあああ〜……」
ジキルとくうぱあの悲鳴が遠ざかっていく。
2人を飲み込んで、床は何事もなかったかのようにぴったりと閉じた。
「食材は…下……」
その後でその通路に入り込んだガビィが、ふと漏らす。
遠くで時を告げる鐘の音が8つ鳴り終わった。

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