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ある時代の流れの中に存在した、ひとつの研究施設を軸にしたキャラ紹介と物語。「戻る」はブラウザBackかパン屑リスト使用推奨です
 
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ジェラールの攻撃。
1STクリティカル!
紫竜に569のダメージ!
2ND!
紫竜に340のダメージ!
3RD!
紫竜に103のダメージ!


取り出された3本のナイフが、次々に紫竜に突き刺さる。
刺さった瞬間、その柄の中に仕込まれていた小型の爆弾が破裂した。

さらに罠が発動した!
紫竜に1039のダメージ!


紫竜の鱗の表面で幾度か爆発が起こる。
それは紫竜の表皮を焼いた。
続いてリュウが飛び出す。

リュウの攻撃。
紫竜に958のダメージ!


接近して紫竜の足に巻きつけた蜘蛛の糸を引く。
巨体は倒れない。
だが鱗に食い込んだ糸が、それでも切れずに紫竜に苦痛の咆哮をあげさせた。
苛立たしげに紫竜が地面を踏み鳴らし、軽い地揺れが里を揺らす。
そこへマスターの呪語(ルーン)が完成した。
リュウがぴょんっと飛び離れる。

四神魔導術 禁奥 『絶・四神乱舞』!
紫竜に20580のダメージ!


究極までに圧縮、増大させた物質崩壊魔術が紫竜を襲った。
もしも真の威力なら、神をも凌駕するといわれる呪語(ルーン)だ。もっともそれをやれば、使った本人も無事では済まされないのだが…。
「…!」
マスターはとっさに構成を結び、重力を中和してその場から離れる。
ガァァァッ!
確かにダメージは鱗を貫通していた。
しかし―――。

紫竜の攻撃。
マスターは攻撃を避けた!


怒りに燃える紫竜の青磁色の目に、まだ翳りは見られない。
鱗のあちこちを己の血で染めながら、一向にその動きは鈍る様子がなかった。
「………」
誰かの小さな舌打ちが響く。
この強さは何だ…?

紫竜の体から、無数の光が放たれた!
リュウに1005のダメージ!
エミフィルナに1202のダメージ!
エルディスに1145のダメージ!
マスターに1067のダメージ!
セティに1380のダメージ!

セティはセインをかばった!
クリティカルヒット!
セティに3027のダメージ!


「セティさん…!?」
庇われたセインが青ざめて、その側に駆け寄る。
「大丈夫ですか?! しっかりしてください!」
その声を聞きながらセティは思い出していた。
考え方は人それぞれ、結局はなるようにしかならないと。
そういう風に考えてしまう自分が嫌で、この里に来た。
よくない未来なんて、変えられるものなら変えてしまい。
それを理想論だと思う自分も変わらず存在しているけれど。
「僕は…貴方の記憶が失われかけた時、思い出してもらうことを望まなかった……。僕の決意は誰にも覆せない…覆してほしくない、そう貴方にだって……」
魔術を志すものは常に冷静であれと教えられて育ち。
そのためか思考の全てが、熱を帯びる事がなかった。
現実的に理知的に。
そういう人間である自分が、久しぶりに感情を出して話した相手。
「……僕が一人ではない事を教えてくれたのは…セインさんです……。
僕は…この世界にただ二人、僕の好きな彼女と貴方にだけは、死んで欲しくない…。…笑っていて欲しい……」
セインがハッと顔色を変えた。
「……貴方がそれを望まない事を…知っていたとしても……」
この身を犠牲にすることもいささかも躊躇わない。

シャルロットはルーン魔法を唱え始めた!

説得しようと思っていた。
里長を説得できれば、確実にこの戦を終わらせる事が出来る。
そう思っていた。
いや、今でもそう思っている。
でも……!
「心だけ残していかれるのはイヤよ…もっと、もっと自分の勘信じてれば、失わずに済んだ人がたくさんいる……」

ルレットはルーン魔法を唱え始めた!

「ダメだよぉ、みんな、死んじゃダメだよぉ!」
ルレットが必死に言いながら祈る。
「ルレットは戦う事は嫌いだけど、でも、ルレットの大切な人達が、お兄ちゃんが傷ついていくのに何もできないのはもっと嫌だよ!」
目の前で大切な人が倒れる恐怖。
大切な人を失くすかもしれない恐怖。
もう味わいたくなんかない!

コウ・サリアトレクが現れた!
「私は漆黒の紅い翼、DF5。その名を冠した深紅の死神…彼女の高みに登る為に、お前を鮮血で染めさせてもらう」


「……」
セインは人の気配を感じ、顔を上げた。
そしてそこに、静かにやってきた赤い翼をもつ天使の姿を見る。
コウ・サリアトレク。
光るその金色の瞳を目にした瞬間、セインの中で何かが引っかかった。
『…一人ぼっちは寂しいもんね』
どちらかといえば無愛想で。どこか翳を感じていた。
そんな彼女にあやすように優しく頭を撫でてもらった記憶。
ふと…セインは思い出した。
(たぶんあの時、コウさんは寝ぼけていたんでしょうけど…)
それが証拠に『野良』と呟かれたような気がする。
だが、それでも。
母親を知らないセインに、その温もりは印象的過ぎた。

コウの攻撃。
紫竜に2031のダメージ!

メルスに2320のダメージ!


「コウさん?!」
彼女がPKだということは知ってはいても、セインは実際に人斬りをしているところを見るのは初めてだった。
「私は愛しいというような感情は忘れた…。だから別に、他人を血まみれにするのに抵抗はないよ……」
それに対して、微妙に返事とも思えぬ言葉が返る。

『言いたい事はきちんと……相手に言わないと…伝わらない…よ。無言で……通じ合えるなんて嘘だから……』
セインは顔を歪める。
あの時。
今度は自分からぶつかってみる番だと思ったのだ。
いつも自分に根気強く声をかけてくれたジェラールに。
からかい合いながら自分を強敵だと言ってくれたくうぱあに。
いや…自分を取り巻くすべてに……立ち向かおうと決意したのだ。
「……どうしてですかっ? コウ…師匠はどうして戦うんですか…?」
セインはあえて師匠と呼んだ。
忘れていたことを思い出した証しに…。
コウは微笑する。
「…戦って、血を見て、その様は綺麗で…その時だけ、生きてるって実感がわく……。
血は、生きてる証だから、それが流れてる時は、私も相手も生きてるって実感がわくのさ……」
「………」
おそらく問いを投げれば、コウはそれを哀しいとも感じないと言うだろう。
だが空に輝き始めた星のあえかな光の下だからか…その瞳はどこか寂しげに見えた。
だからセインは唇をかみ締めて俯く。
目の前に倒れているセティの、青い目が物言いたげに見上げてきていた。
しかしもう言葉を発する余力はないのか、その口から声は聞こえなかった。

シャルロットの呪語(ルーン)が完成する。

「インフィニティ・ストーム」!
紫竜に9093のダメージ!


練り上げられた魔力が、頭上にかざされた手から四方八方に放たれる。
雷を帯びた風…カマイタチのようなそれが、全方向から紫竜の鱗を切り裂く。
続いてルレットの呪語(ルーン)も完成した。

「A person`s death〜終焉〜」!
紫竜に14023のダメージ!


上空に凝縮された魔力の塊が、紫竜めがけて流星のように落ちてくる。
ルレットが使える中では最強の、彼女のオリジナルの魔法だ。
どちらの攻撃も紫竜を深く傷つけた。
グァァァァッ!
それでもまだ…紫竜は倒れない。

「はぅ…」
ふらっと後ろに倒れかけたルレットを、ゾファルがしっかりと支える。
「ルレット……?」
「お兄ちゃん〜…ルレット、少し疲れたんだよぉ…」
ルレットはゾファルの腕の中で、すぅっと目を閉じた。
普通では考えられないような魔力を使うため、魔法使用者は魔力が回復するまで眠りに入る。
それがこの魔法の欠点である。
もっともこれを食らって倒れない紫竜が、ある意味圧倒的過ぎるのだ。

セインはぎゅっと拳を握り締めた。
「……希望を…失っちゃダメだよ……」
アプリルの小さな声が耳に届く。
「勝てないって思ったら…その時点で戦いは終わりよ」
それは誰の声だったか。
「ふん…希望、か。この世界に、希望も奇跡もありはしないのに……」
コウの呟きも。
少しずつ生の温もりを失っていくセティの存在も。
セインは静かにその体に魔力を溜めた。
自分が得意としていた土の魔力も、木も金も。
使うことを恐れていた水属性の魔力も。
そして過去を思い出すまではずっと、自分には使えないと思っていた火属性の魔力も。
5つの属性を溜めて。

セインは合成魔法を使った!
ディメンジョン・フレア!!
紫竜に15630のダメージ!


昔、アプリルたちと初めて出会った時に感じた、急速な魔力の高まり。
ぐんっと前に引っ張られるようなそれを再び感じて、セインはその高まりに流されるまま、呪語(カオス・ワーズ)を口にした。
魔法使いでも僧侶でもない自分には、呪語(ルーン)は唱えられても形にすることは出来ない。
だが、昔。まだ人を殺していた頃。
自分は禁術も使っていた。
そう、もともとは。
自分は…魔法を使う者だったから。
あのときの自分もまた、自分であることに違いはないから。

セインは魔法を使った!

周囲に魔力があふれ、暴走する。
里全体にかけられていた、一つの大きな禁呪がそれとぶつかりあい、その場を激しい地揺れが襲った。
夜の闇の中を眩しい光が走り抜け、その場にあったもの、居たものすべてを包み込み覆い隠す。
その光の中で。
グアァァ……!!
里の大地との繋がりを絶たれた紫竜が、それまで受けていたダメージに耐え切れずに断末魔の咆哮をあげるのが聞こえた。

紫竜が死亡!
戦闘に勝利した!


そして……夜が明けた。

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