忍者ブログ
ある時代の流れの中に存在した、ひとつの研究施設を軸にしたキャラ紹介と物語。「戻る」はブラウザBackかパン屑リスト使用推奨です
 
トップページ ≫  story ≫  ≫ [PR]セイン ≫ 「少しだけ未来のこと」 
 
 [PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

語り婆と呼ばれる老女は、そこまで語ってふう…と大きく息を吐いた。
日の高いうちに始めた話は、外が夜の闇に閉ざされても終わることはなく。
1年前のあの戦いで、いかに様々なことがあったのかを偲ばせる。
「どうするね? 今日はこの辺りでやめにしておくかい?」
老女は前にちょこんと座っている、5才かそこらの子供に優しく語りかけた。
先ほどからしばしばする目を擦りながら、それでも興味深そうに聞いていた少年は、ふるふると首を横に振る。
青みがかった銀色の髪が、さらさらと揺れた。
「これからがおもしろいところでしょ? ボク、聞きたい〜」
その無邪気な口調に、老女の口元にも微笑みが浮かぶ。
「ねえ。結局、その紫の竜は見つかったの?」
人間としての長の話は終わった。
次は竜となった長とセインたちとの決着の話だ。
どっちが勝ったのか、里はどうなったのか。
そしてそれぞれこの戦に関わったものの行く末は…。
老婆はお茶をすする。
「冒険者たちは必死で長の化身である竜を探したんじゃ」
長が再来を告げた日は3日後。
その時には理性のある竜という、途方もない化け物が出来あがっている。
何とかそれまでに…まだ竜が獣であるうちに倒せれば勝機は十分にある。
しかし3日が過ぎてしまったなら…。
セインたちは苦しい戦いを迫られそうだった。
そんな中…セインは記憶を失いかけていた。


「セイン殿は生命力を消耗しておったのじゃ。昔の力は少々、その身には荷が重過ぎたようじゃの」
老女は水晶玉を懐から取り出す。
彼女は伝承者であると同時に占い師でもあった。
桔梗に頼まれ、何度かセインの行く末を占った事もある。
「セイン殿の側に味方した冒険者達の一部は、セイン殿に思いをぶつけた」
近い記憶から次第に忘れていく。
印象的な…というより人とのつながりが深い記憶であればあるほど、その傾向は顕著にあらわれた。
ジェラール、アプリル、くうぱあ、セティ…。
その中には自分との記憶を忘れたままであることを望む者もいた。
「その甲斐あってか、記憶はだいぶ戻ったようだったね」
すべてとは言わない。
セインの背は縮んだままだったし、本能的なものからかその原因を薄々と悟ったセインは、自分には強すぎる魔法(特に最近使えるようになった水属性の魔法)を使うのを恐れるようになった。
「ふぅん」
きらりと少年の明るい紫色をした瞳が光る。
ふと老婆は既視感を覚えた。
しかしそれが何だかは分からずに、空になった湯飲みにお茶を注ぐ。
「……紫竜が見つかったのはちょうど2日目の、日が落ちんとする夕暮れ時じゃった。夜が更けてしまえば、長が望むように理性を保ったままの竜の出来上がりというわけだの」
少年は興味に目を輝かせて、身を乗り出した。
「それで? セインたちはどう戦ったの?」
老婆は水晶玉を通して見た戦いの様子を思い出す。
2日目のあの日。
珍しく空は晴れ、夕焼けで空が綺麗に染まった日だった。

拍手

PR
 最新記事 
 アルカナこれくしょん 
 プロフィール 
HN:
S
性別:
非公開
 Secret 

Template by ららららいふ / Material by 素材くん「無料WEB素材屋」

忍者ブログ [PR]