ある時代の流れの中に存在した、ひとつの研究施設を軸にしたキャラ紹介と物語。「戻る」はブラウザBackかパン屑リスト使用推奨です
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紅い鳥居が見える。自然と心が弾む。
鳥居前の社号標にはその小さな神社の名前が刻まれていた。
幼い風夏には字が難しすぎて読めなかったが、今ならたやすくその名前を音にすることが出来る。
「泉水(せんすい)神社…」
風夏は社号標に手を触れ、小さく唇を動かした。
神社の名前が刻まれた大きな社号標は、小さい頃ほどではなくても遥かに大きく感じられる。
実際、風夏の背丈より随分と大きい。
「うち、帰ってきたんやなぁ…」
風夏の頬に思わずといった風な笑みが零れた。
泉水神社…それは風夏が15の時に関西の方の全寮制の学校に転校するまで、いつも身近にあった小さな神社だった。
幼馴染の高岡竜司の生家でもあり、何故か妖魔に狙われる風夏をそれとなく何回も守り助けてくれた場所でもある。
「何やすごい久しぶりっちゅう気がするわ」
風夏は笑いながら鳥居をくぐった。
泉水神社はその後ろに繁る森に今にも飲み込まれそうなぐらい小さな神社のため、鳥居も今風夏がくぐった一つしかない。
すぐに社殿の扉が見えてくる。
風夏はいつものようにばっと勢いよく駆け出した。
勢いそのままにバンっ!と社殿の両開き戸を押し開ける。
『もっと静かに開けろ。ここをどこだと思ってんだ!』
懐かしい声が聞こえた気がした。
よくそこの掃除をしていた竜司は、飛び込んできた風夏に顔をしかめてよくそう怒鳴ったものだった。
「…知っとるわ。ご神体がある大事な本殿やろ?」
風夏はそのたびに繰り返した言葉を、音にしてみる。
何を期待していたのだろう。
風夏の笑みが苦笑に変わった。
ここに来ても仕方ないと、そう分かっていたのに。
「おっちゃんは社務所の方なんかな」
そう言いながら風夏は動こうとはしなかった。
よく磨かれた床にぺたりと座り込む。
ご神体を見るとはなしに見つめながら、風夏の眉間にきゅっとしわが寄った。
18になって学校を卒業して、この地に戻ってきて。
次の日には幼馴染たちと再会して、色々と土産話を話そうと思っていたのだ。
それなのにその風夏が帰ってきた晩から、幼馴染の1人、竜司の行方がようとしてしれない。
おじさんは警察に連絡し、風夏も何か手がかりでもないかと探し回った。
しかしすべては無駄に終わっていた。
「早よ帰ってきぃや。しょーもないことが原因やったら、ほんまに怒るで」
とつとつと口にした言葉の語尾がかすれる。
風夏は制服のスカートの裾をぎゅっと握りしめた。
「しょーもないことが原因っちゃうかっても怒るけど…」
今なお、この神社の一部は結界に守られていて、弱い妖魔は立ち入ることすら出来ない。
そのことだけが竜司がどこかで生きていることを示してくれていた。
術者の命が断たれれば、結界もまた消えるのだから。
「何でもええから、早よ帰ってくんねんで」
風夏は風に言い聞かせるように呟く。
開け放たれた入り口から、本殿の中へと弱い日差しが入り込んでいた。
鳥居前の社号標にはその小さな神社の名前が刻まれていた。
幼い風夏には字が難しすぎて読めなかったが、今ならたやすくその名前を音にすることが出来る。
「泉水(せんすい)神社…」
風夏は社号標に手を触れ、小さく唇を動かした。
神社の名前が刻まれた大きな社号標は、小さい頃ほどではなくても遥かに大きく感じられる。
実際、風夏の背丈より随分と大きい。
「うち、帰ってきたんやなぁ…」
風夏の頬に思わずといった風な笑みが零れた。
泉水神社…それは風夏が15の時に関西の方の全寮制の学校に転校するまで、いつも身近にあった小さな神社だった。
幼馴染の高岡竜司の生家でもあり、何故か妖魔に狙われる風夏をそれとなく何回も守り助けてくれた場所でもある。
「何やすごい久しぶりっちゅう気がするわ」
風夏は笑いながら鳥居をくぐった。
泉水神社はその後ろに繁る森に今にも飲み込まれそうなぐらい小さな神社のため、鳥居も今風夏がくぐった一つしかない。
すぐに社殿の扉が見えてくる。
風夏はいつものようにばっと勢いよく駆け出した。
勢いそのままにバンっ!と社殿の両開き戸を押し開ける。
『もっと静かに開けろ。ここをどこだと思ってんだ!』
懐かしい声が聞こえた気がした。
よくそこの掃除をしていた竜司は、飛び込んできた風夏に顔をしかめてよくそう怒鳴ったものだった。
「…知っとるわ。ご神体がある大事な本殿やろ?」
風夏はそのたびに繰り返した言葉を、音にしてみる。
何を期待していたのだろう。
風夏の笑みが苦笑に変わった。
ここに来ても仕方ないと、そう分かっていたのに。
「おっちゃんは社務所の方なんかな」
そう言いながら風夏は動こうとはしなかった。
よく磨かれた床にぺたりと座り込む。
ご神体を見るとはなしに見つめながら、風夏の眉間にきゅっとしわが寄った。
18になって学校を卒業して、この地に戻ってきて。
次の日には幼馴染たちと再会して、色々と土産話を話そうと思っていたのだ。
それなのにその風夏が帰ってきた晩から、幼馴染の1人、竜司の行方がようとしてしれない。
おじさんは警察に連絡し、風夏も何か手がかりでもないかと探し回った。
しかしすべては無駄に終わっていた。
「早よ帰ってきぃや。しょーもないことが原因やったら、ほんまに怒るで」
とつとつと口にした言葉の語尾がかすれる。
風夏は制服のスカートの裾をぎゅっと握りしめた。
「しょーもないことが原因っちゃうかっても怒るけど…」
今なお、この神社の一部は結界に守られていて、弱い妖魔は立ち入ることすら出来ない。
そのことだけが竜司がどこかで生きていることを示してくれていた。
術者の命が断たれれば、結界もまた消えるのだから。
「何でもええから、早よ帰ってくんねんで」
風夏は風に言い聞かせるように呟く。
開け放たれた入り口から、本殿の中へと弱い日差しが入り込んでいた。
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