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ある時代の流れの中に存在した、ひとつの研究施設を軸にしたキャラ紹介と物語。「戻る」はブラウザBackかパン屑リスト使用推奨です
 
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目を閉じると、頬を撫でていく風の優しさが心地良かった。
「ええ天気やなぁ〜・・・」
風夏は嬉しそうに思いっきり伸びをする。
久しぶりの秋晴れ。
昨日ようやく深い森を抜けた。
周囲に広がるのは視界を遮るものなどない、どこまでも続きそうな草原だけだ。
「うちが一番好きなんは夏やけど、こういう秋晴れもけっこう好きやわ」
寒かったり雲が多かったりする天気が多いだけに余計に、時折見られる抜けるような青空には心弾む。
風夏は伸びをした姿勢のまま、後ろにばふっと倒れこんだ。
結構下草は厚く、柔らかに風夏を受け止める。
「春は眠くなるっちゅーけど、こういう日は秋でも眠くなりそうやわ〜」
下に敷いている草の感触が悪くなかったのか、彼女は頬を緩めてコロンと横向きになった。
草の匂い土の匂い。
夏場の清々しいそれとはやっぱり違うけれど、やっぱり悪くない。
それに秋の日差しは目をやかないのだ。
どこかに弱さを持ちながら、それでも優しく降り注いでくる秋の太陽。
風夏は満足して、再び仰向けに身体の向きを変えた。
「竜司や那智もどっかでこうしとるんかなぁ」
どこかで同じように秋の日差しを浴びているのだろうか。
同じように秋の風を心地良く感じているのだろうか?
「元気しとるかな」
風夏は空を遠く見上げる。
3人で居た時間は昨日の事のようでありながら、遥かに遠い。
「あー、止めや止め」
突然、風夏は首を振るとぎゅうっと目を閉じた。
「いくら秋やからって感傷に浸るんは、うちには合わへんわ」
寂しいなんて言わない。
言えば余計に寂しくなる気がするから。

静かな秋の風に誘われて、やがて寝息が聞こえるようになるまでそう時間はかからないのだった。

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