忍者ブログ
ある時代の流れの中に存在した、ひとつの研究施設を軸にしたキャラ紹介と物語。「戻る」はブラウザBackかパン屑リスト使用推奨です
 
トップページ ≫  story ≫  ≫ [PR]レン・ラムリィ ≫ 第一世界「意味なんか無いんだよ(4)」
 
 [PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

そこには先ほどと見たときと変わらず妖鳥が倒れていた。
女が与えた致命傷となった傷もそのままだ。
ホッとすると同時に些か拍子抜けのように感じた。
それはあまりにあっけなく終わった戦いの残り火のせいだったのかもしれない。
女は苦笑を浮かべてレンに向き直る。
「それは偶然、違う妖鳥が棲みついたか何かだね。
まあ、ちょっと頻度に問題はあるような気がするけど」
この山が妖鳥が棲みやすい土壌なのかもしれない。
彼らは得てしてこういう山に生息するものだし。
「グウゼンなんかじゃないよ。これはぜったい起こること、なんだ」
レンはさっきとは逆のことをきっぱりと言い放った。
静かな蒼い二つがじっと女を見つめている。
「絶対?」
少年の顔を見返しながら、女はふと違和感を覚える。
彼の年齢はどう高く見積もっても5〜6才程度。
小柄なせいもあって、それよりも幼いといわれても納得するぐらいだ。
だが思えばこの子はおかしなことを言ってないか。
「10年前のことを何であんたが絶対起こることだった、なんて言えるんだい?まだ生まれてもいないだろ?」
その疑念を隠さず指摘すると、レンは小さく唇を噛んだ。
初めてどこか躊躇うように目線が逸れる。
「……それは…」


言いかけてもう一度言葉を飲み込む仕草に、女は眉をひそめた。
直感的に、この少年はもしかしたら自分と同じところに属する人間なのではないかと思う。
いわゆる―――。
「あんたも長寿なクチ?見た目は信用ならないってことかい」
彼女自身、すでに一世紀以上の時を生きていた。
外見は20代の時のまま、いつまでも老いることない。
それはどうやら彼女の生まれに影響しているようだったが、詳しい事情を彼女はまだ突き止めていなかった。
少年がハッと息を呑んで女を見返し…そして、困ったように小さく微笑む。
「長寿、なのかな。それはまだ分かんない。僕、まだ5年しか生きてないし」
その言葉自体やはりいろいろと矛盾を孕んでいて、女はますます顔をしかめる。
再度それを問い詰めようと彼女が口を開いた瞬間…レンはその追求から逃れるように話題を戻した。
「その鳥は望まれてよびだされたもの…望む人がいる限り、何回でもここにくるんだ」
「え?」
「前にその鳥がたおされた後、黒い服のひとがきて話してた。なにをしてたかも見たよ」
レンがそう口にしたちょうどそれと同時に、ひゅんっと岩陰から飛んできた何かが女の肩すれすれのところを掠める。
風を切って飛んでいったそれを振り返って視界に収め、彼女の身体に緊張が走った。
レンの前に踊り出て、棍を構えナイフが飛んできた方向に殺気を叩きつける。
「そこのやつ…出てきな」


ちらちらと舞っていた雪がいつの間にか少しだけその降りを強めていた。
突きつけられたまま動かない棍の先にも、じっとその方角を睨みつけたまま動かない女の髪や肩にも、倒れ伏している妖鳥の体の上にも。白い雪花が降り積もっていった。

拍手

PR
 最新記事 
 アルカナこれくしょん 
 プロフィール 
HN:
S
性別:
非公開
 Secret 

Template by ららららいふ / Material by 素材くん「無料WEB素材屋」

忍者ブログ [PR]