ある時代の流れの中に存在した、ひとつの研究施設を軸にしたキャラ紹介と物語。「戻る」はブラウザBackかパン屑リスト使用推奨です
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ざわざわと森の木々が風に揺らいだ。
雨の粒も強風に煽られ、バラバラと生い茂った常葉樹の葉の表面を叩く。
里とその周囲を囲む森との境。
そこにふっ…と二つの影が現れた。
「………」
マスターは、どさりとその場に脱力したセインを下ろす。
「…ここで…いい……」
目を覚ませば、1人で行きたい場所へと行くだろう。
それがどこであるかは、とりあえず興味はない。
まだ彼女に聞きたいことがある…。
屋敷へと舞い戻ろうと、先程までいた場所を自然にイメージしたその時。
「…まあ、待てよ」
横手から聞き覚えのある声がかけられる。
マスターはふっと集中していた魔術の構成を解いた。
目を上げると、森の中から四半妖が現れるのが見えた。
銀色の混ざった金髪から突き出る耳。青い尻尾。
「マスター、俺と戦え」
彼、ジェイク・エスロードはにやりと笑った。
風をはらみ、バタバタと青いバンダナと空色のコートがはためく。
「………」
「前ん時は戦闘訓練ってことだったけどさ、一度マスターと全力で戦いたいと思ってたんだよ」
無言で見つめるマスターに、ジェイクは続けた。
そう、一度目は戦闘訓練。
体が鈍るので戦いたいと言ったマスターに付き合うように、戦いを始めていた。
お互いに本気ではなかった。
が、あの時はほぼ……ジェイクは自分の負けだったと思っている。
『命がけの真剣勝負なら…俺の方が危なかったな…』
あのときマスターはそう言っていたが、果たしてどうなのだろうか。それを確かめてみたい。
そこまで考えて、ジェイクはちらりと地面に伏せたままのセインを見やった。
あの時、彼もその場にいた。
自分とマスターの戦闘がきっかけで、えらいこと(※)になったりもしたが……。
「…まあ、大丈夫だよな」
ジェイクはそう結論付ける。
セインは深く眠っているようだ。とりあえず気にすることはない。
「殺す気で来いよ、マスター」
言いながら、自分にディストラップをかける。
ジェイクの本気を悟ったのか、マスターもす…っと微妙に体勢を変えた。
「…分かった……」
それが戦闘の合図となった。
初めに仕掛けたのはジェイクだった。
戦闘訓練のとき使った炎龍砲を、何の前触れもなく解き放つ。
炎の渦がマスターへと走った。
それと同時に地面を蹴る。
「…『炎龍砲』……」
同じ魔法でそれを相殺するのは予測済み。
以前はそのあと、先手を許したが……ジェイクは炎が吹き付けているのとは違う角度からスプリング・ボムを放った。
「うらあッ…」
「………」
少しだけ眉をひそめたマスターが、魔術を展開してその範囲から逃れようとするのもまたあの時と同じだ。
すぐに水属性の魔力を展開し、フリーズ・アローを地面に落ちる前のボムへと付加する。
それを視界の端に捉えながらも、マスターは銃を抜き、ジェイクに向けて撃ってきた。
氷の矢が誘爆を起こすことなく、ボムを包んだのを見ながらジェイクはそれをすれすれでかわす。
「へっ……意外とうまく行くもんだな……っ」
氷のボムがマスターの後を追うように魔力を追加した。
「ち……」
マスターが小さく舌打ちして、さらに飛び退る。
下手に魔法で撃ち落としたらその時点で爆発しかねない。
そしてそれが自分を追う以上落とすのをあきらめたのか、マスターはジェイクに接近した。
魔術が一番得意とはいえ、打撃攻撃が不得手なわけではない。
また、そうすれば、ジェイクもまた氷漬けのボムを下手には動かせないだろう。
マスターは掌底での突きを繰り出した。
「く……っ」
その威力をたとえ手加減したものとはいえ知っているジェイクは、それを嫌うように身をひねって避ける。
同時に左手に再び水属性の魔力を集めた。
接近戦とはいえ構わず魔術を使うことはこの間の戦闘訓練でマスターも知っているので、障壁を展開してそれを防ぐ。
そのとき。
「……マスターさ…ん?」
小さな声がふと、ジェイクとマスターの耳を掠めた。
「ジェイクさんま…で……?」
戦闘は止まらない。
しかし、ジェイクは僅かに表情を緊張させた。
セインが目覚めた。
状況が分かっていないように困惑した顔をしているのが見える。
「…早めに決着をつけるしかない……っか」
ジェイクは呻くように言ってマスターの攻撃をかわしながら、その左手に木の魔力、右手に水の魔力を集め始めた。
彼のもっとも得意とする魔法、フリーズミストだ。
それを戦闘訓練で見ている、マスターは僅かに緊張した色を浮かべる。
しかし……それが放たれることはなかった。
「……やめてくださいっ!」
泣きそうな目をして叫んだセインの体に、土の魔力が集まる。
「…メテオストライク……?」
「なっ、何だって?! お、おい、セインさん!」
土属性ではかなり上位に位置する魔法だ。
そんなもの喰らったら、絶対に無傷ではおれない。
マスターとはボロボロになるまで戦うつもりのジェイクだったが、相手がセインとなるとまた話は別だった。
仕方なく使い道のなくなっていた氷漬けのボムを、セインの近くに向けて放つ。
直接当てるとセインが危ないが、余波ぐらいならたぶん命に別状はないだろう。
ジェイクはそう踏んだ。
セインが魔力を解き放つ前に、それは地面へとぶち当たり爆発を起こす。
ごうっと爆炎が巻き起こった。
一瞬、視界が土埃に閉ざされた。
(文中の※ …… チャットにて繰り広げられた話。参加者の方が文章にしてくださいましたが現在、そちらのサイトが一時閉鎖中のため、リンクは切ってあります)
雨の粒も強風に煽られ、バラバラと生い茂った常葉樹の葉の表面を叩く。
里とその周囲を囲む森との境。
そこにふっ…と二つの影が現れた。
「………」
マスターは、どさりとその場に脱力したセインを下ろす。
「…ここで…いい……」
目を覚ませば、1人で行きたい場所へと行くだろう。
それがどこであるかは、とりあえず興味はない。
まだ彼女に聞きたいことがある…。
屋敷へと舞い戻ろうと、先程までいた場所を自然にイメージしたその時。
「…まあ、待てよ」
横手から聞き覚えのある声がかけられる。
マスターはふっと集中していた魔術の構成を解いた。
目を上げると、森の中から四半妖が現れるのが見えた。
銀色の混ざった金髪から突き出る耳。青い尻尾。
「マスター、俺と戦え」
彼、ジェイク・エスロードはにやりと笑った。
風をはらみ、バタバタと青いバンダナと空色のコートがはためく。
「………」
「前ん時は戦闘訓練ってことだったけどさ、一度マスターと全力で戦いたいと思ってたんだよ」
無言で見つめるマスターに、ジェイクは続けた。
そう、一度目は戦闘訓練。
体が鈍るので戦いたいと言ったマスターに付き合うように、戦いを始めていた。
お互いに本気ではなかった。
が、あの時はほぼ……ジェイクは自分の負けだったと思っている。
『命がけの真剣勝負なら…俺の方が危なかったな…』
あのときマスターはそう言っていたが、果たしてどうなのだろうか。それを確かめてみたい。
そこまで考えて、ジェイクはちらりと地面に伏せたままのセインを見やった。
あの時、彼もその場にいた。
自分とマスターの戦闘がきっかけで、えらいこと(※)になったりもしたが……。
「…まあ、大丈夫だよな」
ジェイクはそう結論付ける。
セインは深く眠っているようだ。とりあえず気にすることはない。
「殺す気で来いよ、マスター」
言いながら、自分にディストラップをかける。
ジェイクの本気を悟ったのか、マスターもす…っと微妙に体勢を変えた。
「…分かった……」
それが戦闘の合図となった。
初めに仕掛けたのはジェイクだった。
戦闘訓練のとき使った炎龍砲を、何の前触れもなく解き放つ。
炎の渦がマスターへと走った。
それと同時に地面を蹴る。
「…『炎龍砲』……」
同じ魔法でそれを相殺するのは予測済み。
以前はそのあと、先手を許したが……ジェイクは炎が吹き付けているのとは違う角度からスプリング・ボムを放った。
「うらあッ…」
「………」
少しだけ眉をひそめたマスターが、魔術を展開してその範囲から逃れようとするのもまたあの時と同じだ。
すぐに水属性の魔力を展開し、フリーズ・アローを地面に落ちる前のボムへと付加する。
それを視界の端に捉えながらも、マスターは銃を抜き、ジェイクに向けて撃ってきた。
氷の矢が誘爆を起こすことなく、ボムを包んだのを見ながらジェイクはそれをすれすれでかわす。
「へっ……意外とうまく行くもんだな……っ」
氷のボムがマスターの後を追うように魔力を追加した。
「ち……」
マスターが小さく舌打ちして、さらに飛び退る。
下手に魔法で撃ち落としたらその時点で爆発しかねない。
そしてそれが自分を追う以上落とすのをあきらめたのか、マスターはジェイクに接近した。
魔術が一番得意とはいえ、打撃攻撃が不得手なわけではない。
また、そうすれば、ジェイクもまた氷漬けのボムを下手には動かせないだろう。
マスターは掌底での突きを繰り出した。
「く……っ」
その威力をたとえ手加減したものとはいえ知っているジェイクは、それを嫌うように身をひねって避ける。
同時に左手に再び水属性の魔力を集めた。
接近戦とはいえ構わず魔術を使うことはこの間の戦闘訓練でマスターも知っているので、障壁を展開してそれを防ぐ。
そのとき。
「……マスターさ…ん?」
小さな声がふと、ジェイクとマスターの耳を掠めた。
「ジェイクさんま…で……?」
戦闘は止まらない。
しかし、ジェイクは僅かに表情を緊張させた。
セインが目覚めた。
状況が分かっていないように困惑した顔をしているのが見える。
「…早めに決着をつけるしかない……っか」
ジェイクは呻くように言ってマスターの攻撃をかわしながら、その左手に木の魔力、右手に水の魔力を集め始めた。
彼のもっとも得意とする魔法、フリーズミストだ。
それを戦闘訓練で見ている、マスターは僅かに緊張した色を浮かべる。
しかし……それが放たれることはなかった。
「……やめてくださいっ!」
泣きそうな目をして叫んだセインの体に、土の魔力が集まる。
「…メテオストライク……?」
「なっ、何だって?! お、おい、セインさん!」
土属性ではかなり上位に位置する魔法だ。
そんなもの喰らったら、絶対に無傷ではおれない。
マスターとはボロボロになるまで戦うつもりのジェイクだったが、相手がセインとなるとまた話は別だった。
仕方なく使い道のなくなっていた氷漬けのボムを、セインの近くに向けて放つ。
直接当てるとセインが危ないが、余波ぐらいならたぶん命に別状はないだろう。
ジェイクはそう踏んだ。
セインが魔力を解き放つ前に、それは地面へとぶち当たり爆発を起こす。
ごうっと爆炎が巻き起こった。
一瞬、視界が土埃に閉ざされた。
(文中の※ …… チャットにて繰り広げられた話。参加者の方が文章にしてくださいましたが現在、そちらのサイトが一時閉鎖中のため、リンクは切ってあります)
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