ある時代の流れの中に存在した、ひとつの研究施設を軸にしたキャラ紹介と物語。「戻る」はブラウザBackかパン屑リスト使用推奨です
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「……マスターさん。怪我してますわ」
複雑そうな、それでいて心配そうな表情で、エミフィルナがマスターにそっと近寄った。
「…問題ない……」
「…もう…大丈夫って…ききませんわ…」
いろいろと無茶をして1人で背負い込んでしまう彼を見てきたから。
だから「問題ない」という言葉をそのままに受け止める事は出来ない。
……本当はまだ顔を見るだけでも胸が痛いのだけれど。
マスターの怪我を癒しているエミフィルナから離れ、リュウは崩れ始めている屋敷をじっと見つめた。
何だか嫌な予感がする。
「ご主人……?」
胸が重く苦しい。
いてもたってもいられず、リュウは崩壊する屋敷に向かって走り出した。
「あっ、リュウさん?!」
エミフィルナの驚いたような声が追いかけてくる。
「ちょっと見てきます」
それだけを言って。
屋敷の壁にあいた穴から中に飛び込もうとしたリュウは、正面から何かにぶち当たった。
「おいおい、リュウ。私を置いてどこへ行くんだい?」
頭の上から降ってくる、間違えようのない大好きな声。
「ご主人……」
リュウは顔を上げ、そこにくうぱあの顔を見た。
煤けてはいるがとりあえず目立った外傷は見当たらない。
その胸に飛び込んだ形になっていたリュウは、そのままぎゅっと抱きついてそこに顔を埋めた。
「やっぱり中にいたんですね…。どこも痛いところとかないですか?」
くぐもった声が震える。
いつの間にか好きになっていた。
はじめは好きというのがどういうことかも分からなかったけれど。
「リュウこそ怪我はない?」
笑いながら、そっと髪を撫でてくれる大きな手。
何よりも大好きな人。
「えーと……」
くうぱあの後から出てきたジキルが、ぽり…と頬を掻く。
「そこで立ち止まられると、出られないんですが…」
メルスが困ったように笑った。
突然の落雷で開いた穴から、彼らは無事地下の部屋より脱出していた。
「あ…悪い」
あわててくうぱあがリュウを抱えて横にずれる。
「……とりあえず、ここから離れない? 屋敷ももう保たないみたいだしね。
セインさんたちも工房に帰ってるところじゃないかしら?」
シャルロットの提案に。
バラバラと同意の声が上がった。
紫竜なんてものも出てきて。
それぞれ得ている情報に差もある。
とりあえず今は、一度集まるべきなのだろう。
長が言っていた3日の間に、出来れば決着をつけたいと。
地下にいた面々は思った。
「そうですわね。いろいろと聞かなくてはいけない事もあるようですし……」
マスターの怪我を癒し終わったエミフィルナがそう苦笑する。
この里に来て。
ほとんど何が何だか分からないうちに、状況は進んでいるようだった。
屋敷を燃やす炎が、夜空を舐め赤く染め上げる。
そうして夜は更けていった。
複雑そうな、それでいて心配そうな表情で、エミフィルナがマスターにそっと近寄った。
「…問題ない……」
「…もう…大丈夫って…ききませんわ…」
いろいろと無茶をして1人で背負い込んでしまう彼を見てきたから。
だから「問題ない」という言葉をそのままに受け止める事は出来ない。
……本当はまだ顔を見るだけでも胸が痛いのだけれど。
マスターの怪我を癒しているエミフィルナから離れ、リュウは崩れ始めている屋敷をじっと見つめた。
何だか嫌な予感がする。
「ご主人……?」
胸が重く苦しい。
いてもたってもいられず、リュウは崩壊する屋敷に向かって走り出した。
「あっ、リュウさん?!」
エミフィルナの驚いたような声が追いかけてくる。
「ちょっと見てきます」
それだけを言って。
屋敷の壁にあいた穴から中に飛び込もうとしたリュウは、正面から何かにぶち当たった。
「おいおい、リュウ。私を置いてどこへ行くんだい?」
頭の上から降ってくる、間違えようのない大好きな声。
「ご主人……」
リュウは顔を上げ、そこにくうぱあの顔を見た。
煤けてはいるがとりあえず目立った外傷は見当たらない。
その胸に飛び込んだ形になっていたリュウは、そのままぎゅっと抱きついてそこに顔を埋めた。
「やっぱり中にいたんですね…。どこも痛いところとかないですか?」
くぐもった声が震える。
いつの間にか好きになっていた。
はじめは好きというのがどういうことかも分からなかったけれど。
「リュウこそ怪我はない?」
笑いながら、そっと髪を撫でてくれる大きな手。
何よりも大好きな人。
「えーと……」
くうぱあの後から出てきたジキルが、ぽり…と頬を掻く。
「そこで立ち止まられると、出られないんですが…」
メルスが困ったように笑った。
突然の落雷で開いた穴から、彼らは無事地下の部屋より脱出していた。
「あ…悪い」
あわててくうぱあがリュウを抱えて横にずれる。
「……とりあえず、ここから離れない? 屋敷ももう保たないみたいだしね。
セインさんたちも工房に帰ってるところじゃないかしら?」
シャルロットの提案に。
バラバラと同意の声が上がった。
紫竜なんてものも出てきて。
それぞれ得ている情報に差もある。
とりあえず今は、一度集まるべきなのだろう。
長が言っていた3日の間に、出来れば決着をつけたいと。
地下にいた面々は思った。
「そうですわね。いろいろと聞かなくてはいけない事もあるようですし……」
マスターの怪我を癒し終わったエミフィルナがそう苦笑する。
この里に来て。
ほとんど何が何だか分からないうちに、状況は進んでいるようだった。
屋敷を燃やす炎が、夜空を舐め赤く染め上げる。
そうして夜は更けていった。
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