ある時代の流れの中に存在した、ひとつの研究施設を軸にしたキャラ紹介と物語。「戻る」はブラウザBackかパン屑リスト使用推奨です
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どさり。
地面に重いものが落ちるような音がした。
「…つ……」
転移するなり地面に膝をついたマスターが小さく呻く。
屋敷の外。
あまり距離は稼げなかったが、ここなら爆発に巻き込まれる事は無いだろう。
「!」
マスターに引きずられるように転移した恵美璃が、はっと顔色を変えた。
「……大丈夫…だ……」
右腕を押さえ、マスターは少しよろめきながら立ち上がる。
恵美璃の腕を掴んだ時、爆発の方にさらされていた側だ。
完全に避ける事は出来なかった。
その事に小さな舌打ちが漏れる。
「何でボクを助けたりするのさっ! マスターなら余裕で逃げられただろう?!」
気楽そうな瞳に焦りのような色が浮かんでいた。
恵美璃はこめかみを押さえる。
立ち上がったマスターとは逆にその膝がカクンと折れた。
「頭が…痛い……」
唇が小刻みに震えだす。
マスターは黒煙を上げ、炎に呑まれていく屋敷を見上げていたため、それには気づかなかった。
「…誰も…死なせるつもりは無い……。…それに今のお前は敵じゃない…それだけだ……」
まさかこんな爆発で死ぬような相手とも思えないが、里長が生きているか気になった。
自分と戦うまでは死なれては困る。
「…もっとも…ここで倒れるなら…それまでだったと言う事か…」
「……マスターも何だかんだ言ってお人よしだわね…」
傍らから漏れた嘆息まじりの声に。
目を向けてそこに、明らかにさっきまでとは印象の違う恵美璃を見た。
「…戻ったか…『無』…」
「まあ、礼は言っとくよ。すまないね」
ひらひらと手を振りながら、恵美璃がくるりと背を向ける。
「……どこへ…行く…?…」
おそらく彼女の付く側は人格で違うのだろう。
そしてまた、長側に付いているのではないかと見える『無』にも、何らかのたくらみがあるように思えた。
「……まあ、趣味と実益を兼ねて、かしらね? もう少しだけ見させてもらうわ」
マスターの言葉の意図を正しく読み取って、恵美璃は答える。
消えていくそれを見送りながら、マスターは少しだけ眉を寄せ考える所作を見せた。
油断は出来ない。
だが……顔を合わせてから何となく感じていた警戒が、僅かにやわらぐのを感じていた。
おそらくこれからの戦いで敵としてあいまみえることはないだろう。
それは根拠の無い予想だったが、何故かそういう気がした。
ふと、マスターは顔を上げて恵美璃が去ったのとは逆の道の方向を見た。
「!」
そちらから歩いてきた2人の少女がハッとしたようにこちらを見返してくる。
「マスターさん……!?」
エミフィルナとリュウ。
崩れていく屋敷の側で、3人は顔を合わせた。
知るすべはなかったが時刻はちょうど暁8つ。
別の言い方をすれば丑三つ時。
その時。
ドォンっ!
大きな音と共に崩壊していく屋敷の屋根から何かが飛び出す。
「…紫竜…だと…?」
マスターは冷静な瞳でそれを見上げた。
屋敷から立ち上る炎の中、紫色の巨体が照らし出される。
それが里よりもさらに山の頂の方へと飛び立つうちに。
屋敷がガラガラと激しく崩壊していった。
地面に重いものが落ちるような音がした。
「…つ……」
転移するなり地面に膝をついたマスターが小さく呻く。
屋敷の外。
あまり距離は稼げなかったが、ここなら爆発に巻き込まれる事は無いだろう。
「!」
マスターに引きずられるように転移した恵美璃が、はっと顔色を変えた。
「……大丈夫…だ……」
右腕を押さえ、マスターは少しよろめきながら立ち上がる。
恵美璃の腕を掴んだ時、爆発の方にさらされていた側だ。
完全に避ける事は出来なかった。
その事に小さな舌打ちが漏れる。
「何でボクを助けたりするのさっ! マスターなら余裕で逃げられただろう?!」
気楽そうな瞳に焦りのような色が浮かんでいた。
恵美璃はこめかみを押さえる。
立ち上がったマスターとは逆にその膝がカクンと折れた。
「頭が…痛い……」
唇が小刻みに震えだす。
マスターは黒煙を上げ、炎に呑まれていく屋敷を見上げていたため、それには気づかなかった。
「…誰も…死なせるつもりは無い……。…それに今のお前は敵じゃない…それだけだ……」
まさかこんな爆発で死ぬような相手とも思えないが、里長が生きているか気になった。
自分と戦うまでは死なれては困る。
「…もっとも…ここで倒れるなら…それまでだったと言う事か…」
「……マスターも何だかんだ言ってお人よしだわね…」
傍らから漏れた嘆息まじりの声に。
目を向けてそこに、明らかにさっきまでとは印象の違う恵美璃を見た。
「…戻ったか…『無』…」
「まあ、礼は言っとくよ。すまないね」
ひらひらと手を振りながら、恵美璃がくるりと背を向ける。
「……どこへ…行く…?…」
おそらく彼女の付く側は人格で違うのだろう。
そしてまた、長側に付いているのではないかと見える『無』にも、何らかのたくらみがあるように思えた。
「……まあ、趣味と実益を兼ねて、かしらね? もう少しだけ見させてもらうわ」
マスターの言葉の意図を正しく読み取って、恵美璃は答える。
消えていくそれを見送りながら、マスターは少しだけ眉を寄せ考える所作を見せた。
油断は出来ない。
だが……顔を合わせてから何となく感じていた警戒が、僅かにやわらぐのを感じていた。
おそらくこれからの戦いで敵としてあいまみえることはないだろう。
それは根拠の無い予想だったが、何故かそういう気がした。
ふと、マスターは顔を上げて恵美璃が去ったのとは逆の道の方向を見た。
「!」
そちらから歩いてきた2人の少女がハッとしたようにこちらを見返してくる。
「マスターさん……!?」
エミフィルナとリュウ。
崩れていく屋敷の側で、3人は顔を合わせた。
知るすべはなかったが時刻はちょうど暁8つ。
別の言い方をすれば丑三つ時。
その時。
ドォンっ!
大きな音と共に崩壊していく屋敷の屋根から何かが飛び出す。
「…紫竜…だと…?」
マスターは冷静な瞳でそれを見上げた。
屋敷から立ち上る炎の中、紫色の巨体が照らし出される。
それが里よりもさらに山の頂の方へと飛び立つうちに。
屋敷がガラガラと激しく崩壊していった。
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