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ある時代の流れの中に存在した、ひとつの研究施設を軸にしたキャラ紹介と物語。「戻る」はブラウザBackかパン屑リスト使用推奨です
 
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日が傾きかける頃。
セインは1人で空を眺めていた。
里長の化身である紫竜を追って、これまで費やした日はたったの2日。
しかしたくさんのことがありすぎて、もっと時間が経ったかのように思えた。
今日の夜が更けてしまえば…くうぱあたちが聞いたように里長は理性を残したままの竜へと進化(?)を遂げるのだろう。
「もう…時間がないのですね」
セインの口からぽつりと呟きが漏れる。
「この里の戦いも…もうすぐ終わる……いえ、終わらせる…」
少しだけ思いつめたような表情で、セインは微かに微笑した。
(今は何も考えずに頑張るだけ……桔梗にもそう言われましたしね…)
たとえこの戦で命を落としても。
守りたいものを守れるのなら後悔はしない。
そのためにやっておきたいことは思いつく限り、すべて終わらせた。
セインは髪を緩く束ねている赤い紐にそっと手をかけた。
「……桔梗は死んで…他にも多くの人が傷ついて……」
払った犠牲に思いが向く。
この戦を始めた時には、人が死ぬ事を深く意識していなかったと今なら分かる。
犠牲をまるで出さないで守れるなど、なんて安易な考えだったのだろう。
それをするための努力もせずに、都合のいい夢だけを見ていた。
「自分が弱いなんて言って逃げるのは…もう止めです。
私の心は相変わらず弱いかもしれませんけど…それでも私は……」
セインは赤い紐を解き、それを懐にしまいこむ。
紐は戒め。
昔に犯した過ちを二度と繰り返さないと誓ったもの。
だが…今の自分には枷となる。
「殺戮者には戻りたくない…でも、あの力があれば……」
たとえ戒めを破っても、自分の持つ力のすべてをかけてでも、この戦を終わらせたい。
「もし、私が敵味方の区別もつかなくなっても…くうぱあさんが止めてくださると約束してくださいましたし」
だから安心して、というのもおかしいけれど。

ふと、いつかエルディスが言っていた言葉が蘇る。

『セインさん…この戦いが終わったらさ…アプリルと俺と三人で旅しないか?…凄く自分勝手な事言ってるって分かってるけど…俺は…その方がいいんじゃないかなって思うんだ…。
あ、返事は後でもいいよ…とりあえず今は生き残る事を考えないといけないしね……』

その返事は出来ないかもしれない。
だがもし生きてこの戦を終える事が出来たのなら……アプリルとエルディスと一緒に旅をするのはきっと楽しいだろうと。
セインは静かに頬を緩めた。

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