ある時代の流れの中に存在した、ひとつの研究施設を軸にしたキャラ紹介と物語。「戻る」はブラウザBackかパン屑リスト使用推奨です
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「はぅ〜、誰も帰って来ないよぉ〜」
工房に1人残されたルレットは、心細さと戦っていた。
またも1人ぼっち。
この工房に来るのも初めてで、誰がセインに味方しているのかも分からない。
大きな目がうるっと潤んだ。
「お兄ちゃん〜……」
会いたい。会ってぎゅっと抱きしめてほしい。
そうすれば不安なことだってだいじょうぶになるから。
ガタガタと窓が鳴っている。
風はだんだんとその強さを増しているようだった。
すすり泣くような声がルレットの耳に届く。
「何?声?……はぅ〜〜」
怯えた様子で、ルレットは周囲を見回した。
あちこちから、それは聞こえてきた。
哀しげなすすり泣きが波のように襲ってくる。
「はぅ〜、怖いよぉ〜、悲しいよぉ〜、あっちこっちでみんな泣いてるよぉ〜」
風がせまいところを通り抜ける時の音とは違う。
それは確かに『痛い』と『苦しい』と泣いていた。
ルレットは元々巫女だった。
その為、人よりも感受性が高く、普通では聞こえないものが聞こえ、見えないものが見えるのだった。
今この里では戦いが絶えることなく続いている。
そして様々な思いがこの里を中心に渦巻いてた。
ルレットにはそんな戦ってる人の心の叫びが常に聞こえている状態だった。
それは誰かといる時…特に大切な人といる時は意識されることはなかったが、1人の今、歯止めがなく小さな少女を取り囲んでいた。
「怖いよぅ…悲しいよ、苦しいよぅ……えぐっえぐっ」
すすり泣きにおしつぶされそうになって、ルレットはその場に座り込み膝を抱えて震えた。
里全体を覆う辛く苦しいまでの深い哀しみ。
それは生きている者たちの、吐き出すところのない声にならない叫びでもあった。
「お兄ちゃん、助けて……」
いつでもルレットを守ってくれる暖かな腕。
それが傍らにないことに、恐怖を覚える。
「お兄ちゃん〜……」
少女は1人で震えていた。
黒い雲が渦巻く空。
風は激しく彼の濃緑色のマントを千切れんばかりにはためかせていた。
思いのほか軽装で、ただ腰に差した2本の剣と、何故か布に包まれ抜けないようにされた2本の剣、合わせて4本にもなるそれが目を引く。
(ルレット…無事で居ろ…)
彼の名はゾファル。
森の中ではぐれた唯一の大切な少女を探し、工房へと続く道をひた走っていた。
緑色の瞳は心配に満ちている。
とりあえず彼は己の大切な少女を護る事しか考えてはいなかった。
『…そういう少女なら……たぶん、セイン殿の工房だろう……』
鋭い目をした黒装束の男が漏らした言葉。
その情報を頼りに息を切らし、全速力でここまで来たのだから。
(ルレット……)
何よりも愛しい少女の名を頭の中で呼ぶ。
何があっても誰が相手でも絶対に護り抜く。
それは彼の中で、絶対だった。
ようやく聞き出した工房にたどり着き、扉へと手をかける。
ふと。
視線を感じた。
こちらをじっと見ている気配。
あんまり好ましいものではない。
(誰だ…?……いや、今はルレットのみの安全の確保が優先だ)
感覚に引っかかったそれを、ゾファルは強引に断ち切った。
ルレットの無事を確認してからでないと、その他の何も頭に入らない。
扉を引き開けると、影がさっと引く。
工房の中は曇っている外よりもまだ暗かった。
「…ルレット?」
薄くぼんやりと見える色彩。
それが膝を抱えて震えている、彼の大切な少女だとすぐに気づいて、ゾファルは工房の中へと駆け込む。
「ルレット!?大丈夫か!?」
ぽた…ぽた…っと雨の雫が天より落ち始めていた。
その中で、ゾファルは彼女をすべてのものから護るように、包み込むように抱きしめる。
やがて、雨の音は激しさを増し、嵐へと変わっていった。
工房に1人残されたルレットは、心細さと戦っていた。
またも1人ぼっち。
この工房に来るのも初めてで、誰がセインに味方しているのかも分からない。
大きな目がうるっと潤んだ。
「お兄ちゃん〜……」
会いたい。会ってぎゅっと抱きしめてほしい。
そうすれば不安なことだってだいじょうぶになるから。
ガタガタと窓が鳴っている。
風はだんだんとその強さを増しているようだった。
すすり泣くような声がルレットの耳に届く。
「何?声?……はぅ〜〜」
怯えた様子で、ルレットは周囲を見回した。
あちこちから、それは聞こえてきた。
哀しげなすすり泣きが波のように襲ってくる。
「はぅ〜、怖いよぉ〜、悲しいよぉ〜、あっちこっちでみんな泣いてるよぉ〜」
風がせまいところを通り抜ける時の音とは違う。
それは確かに『痛い』と『苦しい』と泣いていた。
ルレットは元々巫女だった。
その為、人よりも感受性が高く、普通では聞こえないものが聞こえ、見えないものが見えるのだった。
今この里では戦いが絶えることなく続いている。
そして様々な思いがこの里を中心に渦巻いてた。
ルレットにはそんな戦ってる人の心の叫びが常に聞こえている状態だった。
それは誰かといる時…特に大切な人といる時は意識されることはなかったが、1人の今、歯止めがなく小さな少女を取り囲んでいた。
「怖いよぅ…悲しいよ、苦しいよぅ……えぐっえぐっ」
すすり泣きにおしつぶされそうになって、ルレットはその場に座り込み膝を抱えて震えた。
里全体を覆う辛く苦しいまでの深い哀しみ。
それは生きている者たちの、吐き出すところのない声にならない叫びでもあった。
「お兄ちゃん、助けて……」
いつでもルレットを守ってくれる暖かな腕。
それが傍らにないことに、恐怖を覚える。
「お兄ちゃん〜……」
少女は1人で震えていた。
黒い雲が渦巻く空。
風は激しく彼の濃緑色のマントを千切れんばかりにはためかせていた。
思いのほか軽装で、ただ腰に差した2本の剣と、何故か布に包まれ抜けないようにされた2本の剣、合わせて4本にもなるそれが目を引く。
(ルレット…無事で居ろ…)
彼の名はゾファル。
森の中ではぐれた唯一の大切な少女を探し、工房へと続く道をひた走っていた。
緑色の瞳は心配に満ちている。
とりあえず彼は己の大切な少女を護る事しか考えてはいなかった。
『…そういう少女なら……たぶん、セイン殿の工房だろう……』
鋭い目をした黒装束の男が漏らした言葉。
その情報を頼りに息を切らし、全速力でここまで来たのだから。
(ルレット……)
何よりも愛しい少女の名を頭の中で呼ぶ。
何があっても誰が相手でも絶対に護り抜く。
それは彼の中で、絶対だった。
ようやく聞き出した工房にたどり着き、扉へと手をかける。
ふと。
視線を感じた。
こちらをじっと見ている気配。
あんまり好ましいものではない。
(誰だ…?……いや、今はルレットのみの安全の確保が優先だ)
感覚に引っかかったそれを、ゾファルは強引に断ち切った。
ルレットの無事を確認してからでないと、その他の何も頭に入らない。
扉を引き開けると、影がさっと引く。
工房の中は曇っている外よりもまだ暗かった。
「…ルレット?」
薄くぼんやりと見える色彩。
それが膝を抱えて震えている、彼の大切な少女だとすぐに気づいて、ゾファルは工房の中へと駆け込む。
「ルレット!?大丈夫か!?」
ぽた…ぽた…っと雨の雫が天より落ち始めていた。
その中で、ゾファルは彼女をすべてのものから護るように、包み込むように抱きしめる。
やがて、雨の音は激しさを増し、嵐へと変わっていった。
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