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ある時代の流れの中に存在した、ひとつの研究施設を軸にしたキャラ紹介と物語。「戻る」はブラウザBackかパン屑リスト使用推奨です
 
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木刀を二本抱えた冒険者風の男と、何故か薄桃色のウェディングドレスを着た少女が忍びたちに囲まれていた。
周囲の忍びたちは静かな殺気を放っているが、二人はそれに怯えることなく前を見つめている。
「セインさんやエルデさんたちはどこにいるんだろ」
男は武器を構えたまま、辺りを見回した。
その緑色の瞳は忍びたちの上を素通りし、セインの工房の影を捉える。
「たぶんあそこじゃないかな」
少女の透き通った青い瞳も同じものを見ていた。
「すんなり通しては…くれないよな」
「そうみたいだね」
里に来て、異様な雰囲気に気がついた。
何が起こっているのか……初めは分からなかった。

『セイン殿は戦うことを決意した』
里の入り口にいた忍びが、物語でも語るように語ったことを。
男は―――くうぱあは考えていた。
おかしな手紙を残したり、突然いなくなったり。
彼の考えていることはよく分からない。
それは今でも変わらない。
でも。
(セインさんが大切なものを守ると言うように、私にも大切なものがあるんですよ…。
勝手ながらエルデさんやセティさんを始め、参戦している人達を私は大切な友人だと思っているんです。もちろん、セインさんも……)
くうぱあは小さく微笑した。
だから戦う。他に理由は要らない。
戦いはあまり好きではないが、これ以上大切な物を失わないために。

少女は―――アプリルはこの里にいるはずの、その彼のことを考えていた。
『セインさんのことは・・・本当のお兄さんみたいに思ってるんだからね・・・』
アプリルがそう言ったとき、少し寂しそうに、でもとても嬉しそうに微笑っていたセイン。
(セインさんはいつもそうだよ…。微笑んでるだけで…ボクに黙ってどっか行っちゃうし)
だから時々、不安になる。
セインに自分は必要ないのではないかと。
セインが突然消えたときの恐怖がよみがえってきて、アプリルは小さく首を左右に振った。
考えちゃいけない。
だって、彼はちゃんとここに戻ってきてくれたのだから。
ちゃんと「ただいま」って笑ってくれたのだから。
(セインさんはボクを巻き込みたくないみたいだけど、セインさんが護りたいものがあるように・・・ボクにも護りたい大切な人たちがいるから!
セインさんやエルが危険な時に・・・護ってもらうだけじゃ・・・危険だからって・・・おいてかれるのはもう嫌だから!)
涙ぐみそうになって、アプリルはドレスの裾をぎゅっと握りしめた。
(たとえ傷つくことになっても・・・ボクにだって何かできるよ!)

工房の方で刃物の打ち合う音が、呪文の詠唱が聞こえてきた。
くうぱあもアプリルもはっとそちらの方を見る。
戦はもう始まっている……。
アプリルがすうっと息を吸い込んだ。
くうぱあも木刀を構え直す。
「くうぱあさん、今度はエルを刺したりしないでね!」
アプリルは小さな体に魔力を溜めながら言った。
「あれは不可抗力なんだよ〜。もうしないって」

2人の戦意を感じとったのか、忍びたちが殺気を強める。
程なくして、辺りを戦いの音が満たしていった。

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