ある時代の流れの中に存在した、ひとつの研究施設を軸にしたキャラ紹介と物語。「戻る」はブラウザBackかパン屑リスト使用推奨です
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ほそぼそと声が聞こえる。
青年はふと興味を覚えて、そちらの方を覗き込んだ。
月も星もない闇夜。
ところどころに焚かれているかがり火の明かりだけが、周囲を照らし出している。
「怪しいですね」
かがり火に青年の瞳がキラリと光った。
少し離れて夜の闇の中、かがり火に照らし出される5,6名の集団。
その中に見慣れた青銀色の長髪を見て、彼は少し表情を引き締めた。
「……セインさん?」
風の噂で聞いている。
彼が大切なものを守るために、戦いを起こしたこと。
その彼の元に、友人達が集まっていること。
だが……彼の周りを取り囲むようにしている影たちは、とてもその友人達のものとは思えない。
「…鍛冶師セイン。あまり我らを見くびるものではないぞ」
笑いながら、青磁の色の瞳を閃かせる1人の男。
「やつらを己の目の前で死なせたくはないのであろう?」
その言葉に、ビクリとセインの肩が跳ねた。
青磁色の目の男の側の影がざわりと動く。
「桔梗に通告を受けただろう。おまえにとって、一番見たくない場面だと思ったが違ったか?」
「……っ」
ギリ…とセインが歯を噛みしめた。
いつも微笑が浮かぶその口は緊張に固く結ばれ、瞳には戦闘意志を宿している。
「―――返答を聞かせてもらおう」
その言葉にセインの瞳に一瞬だけ躊躇いの色が走った。
青年はじっと彼を見守る。
もちろん危なくなったら助けに入るつもりだ。
だが、セインの答えにも興味があった。
「……あの人たちは、私が守らなければならないほど、弱くはないです。むしろ守られているのは私…ですから」
セインは苦しげな顔でそう口を開く。
「だから私に、その脅しは意味がなくなりました。話がそれだけなら帰ってください」
男がムッとした顔をした。
パチンと指を鳴らすと、どこからともなく現れた、赤い着物のくのいちがその足元に控える。
青年ははっとして剣に手をかけ、いつでも飛び出せるように少し前に出た。
少し長めの赤みがかった茶色の髪が、かがり火に照らされる。
セインもまた、清円刀を構え、周囲の忍びたちに気を払っていた。
緊張が膨れ上がった、その時。
「私が戦えもせぬ里人を、今まで好きにさせておいたのは何故だと思う?」
青磁の目の男は、そう冷たい笑みを零した。
「戦が始まって、やつらは逃げたと思っていただろうな?だが……その里人がすべて、我の手の内にあるとしたら?」
「?!」
その意味することを悟ったのか、セインが息を呑んだ。
赤い着物のくのいちがセインに近づく。
「これで投了、ですわ。武器を捨ててくださいまし」
周りの忍びたちも、すっとその包囲網を詰めた。
さすがにもう見ていられなくなって、青年はかがり火のもとへ飛び出す。
「セインさんっ!」
呆然としていたセインが、ふと一瞬だけ我に返った。
「淳さん…?!」
しかしその身柄はすぐに拘束されてしまう。
淳は苦々しい顔で小さく舌打ちした。
このまま捕らえさせてはいけない。
セインの元へ向かうべく、剣を手に敵の只中に斬りかかって行く。
その進路を新たに現れた忍びたちがさえぎった。
「ふん、また新顔か…。仲間に伝えよ。鍛冶師セインは我らの為に武器を作る、とな」
青磁の目の男―――里長セト・ウォートは、そうつまらなさそうに淳に目をやると、その場にすっと背を向ける。
そのあとをセインをひったてるようにして、忍びたちが追った。
「淳さん……!」
連れて行かれながらセインが身をよじって、心配そうな目を向けてくる。
悔しげな顔でその目を見返しながら、淳はかかってくる忍びたちの相手をするしかなかった。
ポツ…ポツ……と雨が降り始める。
家々の屋根を濡らし、草花を、木々を濡らし―――。
地面に落ちた小さな守り刀の上にも。
雨はその夜が明けても降り続いた。
青年はふと興味を覚えて、そちらの方を覗き込んだ。
月も星もない闇夜。
ところどころに焚かれているかがり火の明かりだけが、周囲を照らし出している。
「怪しいですね」
かがり火に青年の瞳がキラリと光った。
少し離れて夜の闇の中、かがり火に照らし出される5,6名の集団。
その中に見慣れた青銀色の長髪を見て、彼は少し表情を引き締めた。
「……セインさん?」
風の噂で聞いている。
彼が大切なものを守るために、戦いを起こしたこと。
その彼の元に、友人達が集まっていること。
だが……彼の周りを取り囲むようにしている影たちは、とてもその友人達のものとは思えない。
「…鍛冶師セイン。あまり我らを見くびるものではないぞ」
笑いながら、青磁の色の瞳を閃かせる1人の男。
「やつらを己の目の前で死なせたくはないのであろう?」
その言葉に、ビクリとセインの肩が跳ねた。
青磁色の目の男の側の影がざわりと動く。
「桔梗に通告を受けただろう。おまえにとって、一番見たくない場面だと思ったが違ったか?」
「……っ」
ギリ…とセインが歯を噛みしめた。
いつも微笑が浮かぶその口は緊張に固く結ばれ、瞳には戦闘意志を宿している。
「―――返答を聞かせてもらおう」
その言葉にセインの瞳に一瞬だけ躊躇いの色が走った。
青年はじっと彼を見守る。
もちろん危なくなったら助けに入るつもりだ。
だが、セインの答えにも興味があった。
「……あの人たちは、私が守らなければならないほど、弱くはないです。むしろ守られているのは私…ですから」
セインは苦しげな顔でそう口を開く。
「だから私に、その脅しは意味がなくなりました。話がそれだけなら帰ってください」
男がムッとした顔をした。
パチンと指を鳴らすと、どこからともなく現れた、赤い着物のくのいちがその足元に控える。
青年ははっとして剣に手をかけ、いつでも飛び出せるように少し前に出た。
少し長めの赤みがかった茶色の髪が、かがり火に照らされる。
セインもまた、清円刀を構え、周囲の忍びたちに気を払っていた。
緊張が膨れ上がった、その時。
「私が戦えもせぬ里人を、今まで好きにさせておいたのは何故だと思う?」
青磁の目の男は、そう冷たい笑みを零した。
「戦が始まって、やつらは逃げたと思っていただろうな?だが……その里人がすべて、我の手の内にあるとしたら?」
「?!」
その意味することを悟ったのか、セインが息を呑んだ。
赤い着物のくのいちがセインに近づく。
「これで投了、ですわ。武器を捨ててくださいまし」
周りの忍びたちも、すっとその包囲網を詰めた。
さすがにもう見ていられなくなって、青年はかがり火のもとへ飛び出す。
「セインさんっ!」
呆然としていたセインが、ふと一瞬だけ我に返った。
「淳さん…?!」
しかしその身柄はすぐに拘束されてしまう。
淳は苦々しい顔で小さく舌打ちした。
このまま捕らえさせてはいけない。
セインの元へ向かうべく、剣を手に敵の只中に斬りかかって行く。
その進路を新たに現れた忍びたちがさえぎった。
「ふん、また新顔か…。仲間に伝えよ。鍛冶師セインは我らの為に武器を作る、とな」
青磁の目の男―――里長セト・ウォートは、そうつまらなさそうに淳に目をやると、その場にすっと背を向ける。
そのあとをセインをひったてるようにして、忍びたちが追った。
「淳さん……!」
連れて行かれながらセインが身をよじって、心配そうな目を向けてくる。
悔しげな顔でその目を見返しながら、淳はかかってくる忍びたちの相手をするしかなかった。
ポツ…ポツ……と雨が降り始める。
家々の屋根を濡らし、草花を、木々を濡らし―――。
地面に落ちた小さな守り刀の上にも。
雨はその夜が明けても降り続いた。
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