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ある時代の流れの中に存在した、ひとつの研究施設を軸にしたキャラ紹介と物語。「戻る」はブラウザBackかパン屑リスト使用推奨です
 
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「くっ…」
セインの口から苦しげな息が漏れる。
ぎりぎりと眼前でかみ合う刃が。
少しずつ圧されていく。
「セインさんっ!」
後ろで別の忍びと戦っているエルディスが切羽詰った声を上げた。
だが駆けつけられる余裕はこちらもない。
相手方は5人の忍び。
1人は司令塔なのか指示を出すのみで直接の手出しはしてこないが、それでも2人で倍の数の相手をしているのだ。
戦士を本業とするエルディスならまだしも、セインの不利は明らかだった。


その時。
静かな詠唱が聞こえた。
バシュッ!
鈍い光の塊がセインの前にいた忍びを弾き飛ばす。
「大丈夫ですか?」
理性に支えられた確かな声。
呆然としていたセインは、そろそろと後ろを振り返った。
青い髪、黒いローブの黒魔道師の姿が。
そこにはあった。
「セティさん……」
「まったく…あなたにはいつも心配をかけさせられます」
少し呆れたように言われ、セインは項垂れた。
その通りだという自覚がある。
だから余計にこたえる。
「新手か……。異邦者よ、邪魔立てするならば命の保障はないぞ」
状況を見守っていた忍び―――上忍(?)が警告を発した。
エルディスと剣を合わせていた忍びがぱっと後ろに下がる。
上忍は戦士と魔道師、二人の姿を見、そのあとにセインの上に視線を留めた。
「この鍛冶師にそれだけの価値があるか?
自らに向けられる人の好意を信じられず、逃げていたこの男に?」
「………」
「私は長の理念に共鳴している。
だから鍛冶師セインを捕らえ、もしも我らに協力をしないようであれば消す。
強大な力の前では、弱者は支配されるか滅びるかしかないのだ」
セインは無言だった。
エルディスはむっとしたように、セティは心なしか苦い顔で、その忍びを見返している。


「……確かに私は弱いですよ。自分の価値なんてものもよく分かりません」
やがてセインは、言葉を選ぶようにゆっくりと言った。
「今、こうしている間だって、恐れて悩んで……。
逃げてしまいたいほどです。でも……逃げても守れないでしょう?
せっかく見つけたのに…せっかく気がついたのに」
どこかで刃物の打ち合う音が、呪文の詠唱が聞こえてくる。
その音がかなり近くで為されていることに気づき、
セインはわずかに心配そうな顔でそちらの方向を見やった。
「私には師匠のように力のある武具を作り出す能力はないと思います。
だから求めても無駄です。そう里長にお伝えください」
少し早口でそう締めくくると、清円刀をしまい、背中の槍に手をかける。
「エルディスさんっ、セティさんっ。
少しの間だけ…少しの間だけでいいですから、私に力を貸してください!」
セインのその言葉に。
すかさず返事が返った。
「つきあうよ」
「ええ、もちろん」
忍びたちも再び武器を構える。
武器を手に傍らを通り過ぎていく時、セティの小さな呟きがセインの耳に届いた。
「こと戦闘において、戦力1+1は2を上回る。生き延びよう…皆で」

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