ある時代の流れの中に存在した、ひとつの研究施設を軸にしたキャラ紹介と物語。「戻る」はブラウザBackかパン屑リスト使用推奨です
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「いや、化けもんだろ」
ジェイクの言葉に、ばっと弾かれたようにセインは顔を上げた。
「アンタは間違いなく化け物だね、少なくとも俺に言わせれば」
少し呆気に取られたようなジェラールとミレナの視線を感じながら、ジェイクは追い討ちをかけるように続ける。
ぴんと外側に向って伸びた狐の耳。
自分だって普通の人間ではない。
だが、それが何だというのだろうか。
ジェイクは怯えた顔をしているセインを見つめる。
自分で自分を誤魔化して、そうであることを否定するから無理をしなくてはならなくなるのだ。
妖狐の血に目覚めてから、生えてきた狐の耳をぎゅっと引っ張る。
「悩んで否定して、こいつが抜けるんなら苦労しないよ。セインさんだってそうだ。
何したって、セインさんが人を殺した事は変わんない」
セインが悲しげに目を伏せた。
見ていてもどかしい。
化け物と言われるのは確かに辛い。
だが、そんな彼をそのまま認めてくれる人間が、ここにはたくさん居るというのに。
「よーするになあ、化け物だからどうこうって事は無いのよ。単なる自分の一要素だろ」
「でもっ…でも、私はジェイクさんとは違うんです……っ。人を殺すから化け物で……。
そんな事はしたくないのに…認めてしまったら、もう本当に化け物になってしまいそうで……っ」
「なあ、セインさん。人を殺すと化け物なのか?」
感情を昂らせ、ぽろぽろと泣きはじめたセインを心配そうに見ながら、ジェラールが声を遮る。
「世の中には何も考えないで人を殺してるやつもいるよ?
自分が正しいんだなんて思って人を殺すやつもいる…」
「……そうですよ…?…そんなことを言っていたら、この世界は化け物であふれてしまいます……」
ミレナも静かに微笑みながら、同意を示した。
里長がぴくりと眉を上げる。
その動向に気を配りながら、ジェラールはもう一度守り刀を座り込んでいるセインに向って差し出した。
「………」
セインが困惑した顔で俯く。
「……でも」
「確かに人を殺す事はよくない事だよな。セインさんに罪がないわけじゃない。
でもだからって、化け物になるわけじゃない。
少なくとも、セインさんは今、人殺しをしたいわけじゃないだろう?」
その言葉に、セインは明らかにハッとした表情を見せた。
「……私は化け物じゃな…い……?」
震える声が返る。
過去のすべてを知る事など不可能だし、過去を知らない事がセインを助けようと思う気持ちの妨げになるなんて思わない。
「…人殺しだ…って…嫌いになったり…しませんか……?……」
怯えた顔で続けるセインを3人は見つめた。
辛い過去を持っているのは、セインだけじゃない。
「嫌いになんてなれないよ」
ジェラールは告げた。
「何回言った?俺はセインさんのことが、大事だよ。家族みたいに思ってる。
…だから、嫌いになんてなれないんだ」
嫌われる事に怯え、自分が誰かを傷つけているのではないかと怯え。
そういうセインに何回も辛抱強く言い聞かせたジェラールだから。
その問いは今更だ。
「…皆…ついて行きますよ……貴方を信じて…集まったのですから……」
ミレナは微笑む。
「……セインさん…。…他の方の考えは深くは知りませんが……きっと皆…貴方が笑顔で一緒に居てくれる事を望んでいますよ……。心からの最高の笑顔で……」
見守る事しかできない事は分かっている。
マスターにもそう言われた。
だが…もつれた糸を解くのを手伝いたいとも思う。
「俺はもう嫌いかもな」
ジェイクがにやりと笑った。
「だから今以上に嫌いになることなんかないね。化け物とか関係ない」
すぐに落ち込んですぐ泣いて。
反応がいちいち面白いセイン。
しっかりしろよと言いたくもなるが、時にその素直さは羨ましくも感じたりする。
彼を支えようとする人たちのためにも、セインには頑張ってもらわないといけない。
戦う相手は自分。
セインも、そして自分自身も……。
セインはごしごしと目をこすって、顔を上げた。
戸惑うような紫の瞳が、里長を挟んで向こう側にいるジェイクとミレナに向けられる。
そしてそれは、傍らにいて変わらず守り刀を差し出しているジェラールに止まり。
セインは守り刀を受け取るように手を伸ばした。
かすかに里長の舌打ちが聞こえる。
ひゅんっ!
ひゅっ!
風を斬るような高い音が反響するかのように、いくつもその場に響いた。
「ぐ…っ」
ジェラールの手から守り刀が滑り落ちる。
彼は腕を押さえて低く呻いた。
赤い雫がぱたぱたっ…と土の上に散る。
「…ぁ…ジェイクさん…大丈夫ですか……っ…?」
向こう側では癒しの淡い光を帯びながらのミレナの、ジェイクを気遣うような声が聞こえてきた。
「……あ…」
セインの顔が青ざめる。
ひゅひゅっ!
再び衝撃音が風を斬り裂いた。
今度は里長の体から放たれたそれの軌跡が、ぼんやりと目に映る。
ジェイクとミレナの方へと向うそれは、最初のものと違い明らかに殺す意図に満ちていた。
ジェイクが側にあるミレナの手を取り、ぎゅっと握りこむ。
守りたい。守れない。
一瞬の間にそんな思考だけが走りぬけた。
目の前を赤が覆う。
風の中にむっとするような血の匂いが混ざった…。
ジェイクの言葉に、ばっと弾かれたようにセインは顔を上げた。
「アンタは間違いなく化け物だね、少なくとも俺に言わせれば」
少し呆気に取られたようなジェラールとミレナの視線を感じながら、ジェイクは追い討ちをかけるように続ける。
ぴんと外側に向って伸びた狐の耳。
自分だって普通の人間ではない。
だが、それが何だというのだろうか。
ジェイクは怯えた顔をしているセインを見つめる。
自分で自分を誤魔化して、そうであることを否定するから無理をしなくてはならなくなるのだ。
妖狐の血に目覚めてから、生えてきた狐の耳をぎゅっと引っ張る。
「悩んで否定して、こいつが抜けるんなら苦労しないよ。セインさんだってそうだ。
何したって、セインさんが人を殺した事は変わんない」
セインが悲しげに目を伏せた。
見ていてもどかしい。
化け物と言われるのは確かに辛い。
だが、そんな彼をそのまま認めてくれる人間が、ここにはたくさん居るというのに。
「よーするになあ、化け物だからどうこうって事は無いのよ。単なる自分の一要素だろ」
「でもっ…でも、私はジェイクさんとは違うんです……っ。人を殺すから化け物で……。
そんな事はしたくないのに…認めてしまったら、もう本当に化け物になってしまいそうで……っ」
「なあ、セインさん。人を殺すと化け物なのか?」
感情を昂らせ、ぽろぽろと泣きはじめたセインを心配そうに見ながら、ジェラールが声を遮る。
「世の中には何も考えないで人を殺してるやつもいるよ?
自分が正しいんだなんて思って人を殺すやつもいる…」
「……そうですよ…?…そんなことを言っていたら、この世界は化け物であふれてしまいます……」
ミレナも静かに微笑みながら、同意を示した。
里長がぴくりと眉を上げる。
その動向に気を配りながら、ジェラールはもう一度守り刀を座り込んでいるセインに向って差し出した。
「………」
セインが困惑した顔で俯く。
「……でも」
「確かに人を殺す事はよくない事だよな。セインさんに罪がないわけじゃない。
でもだからって、化け物になるわけじゃない。
少なくとも、セインさんは今、人殺しをしたいわけじゃないだろう?」
その言葉に、セインは明らかにハッとした表情を見せた。
「……私は化け物じゃな…い……?」
震える声が返る。
過去のすべてを知る事など不可能だし、過去を知らない事がセインを助けようと思う気持ちの妨げになるなんて思わない。
「…人殺しだ…って…嫌いになったり…しませんか……?……」
怯えた顔で続けるセインを3人は見つめた。
辛い過去を持っているのは、セインだけじゃない。
「嫌いになんてなれないよ」
ジェラールは告げた。
「何回言った?俺はセインさんのことが、大事だよ。家族みたいに思ってる。
…だから、嫌いになんてなれないんだ」
嫌われる事に怯え、自分が誰かを傷つけているのではないかと怯え。
そういうセインに何回も辛抱強く言い聞かせたジェラールだから。
その問いは今更だ。
「…皆…ついて行きますよ……貴方を信じて…集まったのですから……」
ミレナは微笑む。
「……セインさん…。…他の方の考えは深くは知りませんが……きっと皆…貴方が笑顔で一緒に居てくれる事を望んでいますよ……。心からの最高の笑顔で……」
見守る事しかできない事は分かっている。
マスターにもそう言われた。
だが…もつれた糸を解くのを手伝いたいとも思う。
「俺はもう嫌いかもな」
ジェイクがにやりと笑った。
「だから今以上に嫌いになることなんかないね。化け物とか関係ない」
すぐに落ち込んですぐ泣いて。
反応がいちいち面白いセイン。
しっかりしろよと言いたくもなるが、時にその素直さは羨ましくも感じたりする。
彼を支えようとする人たちのためにも、セインには頑張ってもらわないといけない。
戦う相手は自分。
セインも、そして自分自身も……。
セインはごしごしと目をこすって、顔を上げた。
戸惑うような紫の瞳が、里長を挟んで向こう側にいるジェイクとミレナに向けられる。
そしてそれは、傍らにいて変わらず守り刀を差し出しているジェラールに止まり。
セインは守り刀を受け取るように手を伸ばした。
かすかに里長の舌打ちが聞こえる。
ひゅんっ!
ひゅっ!
風を斬るような高い音が反響するかのように、いくつもその場に響いた。
「ぐ…っ」
ジェラールの手から守り刀が滑り落ちる。
彼は腕を押さえて低く呻いた。
赤い雫がぱたぱたっ…と土の上に散る。
「…ぁ…ジェイクさん…大丈夫ですか……っ…?」
向こう側では癒しの淡い光を帯びながらのミレナの、ジェイクを気遣うような声が聞こえてきた。
「……あ…」
セインの顔が青ざめる。
ひゅひゅっ!
再び衝撃音が風を斬り裂いた。
今度は里長の体から放たれたそれの軌跡が、ぼんやりと目に映る。
ジェイクとミレナの方へと向うそれは、最初のものと違い明らかに殺す意図に満ちていた。
ジェイクが側にあるミレナの手を取り、ぎゅっと握りこむ。
守りたい。守れない。
一瞬の間にそんな思考だけが走りぬけた。
目の前を赤が覆う。
風の中にむっとするような血の匂いが混ざった…。
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