ある時代の流れの中に存在した、ひとつの研究施設を軸にしたキャラ紹介と物語。「戻る」はブラウザBackかパン屑リスト使用推奨です
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「何ですって…?!」
シャルロットが息をのむ。
「私は世情を探りに出た旅の中で、様々な術を身につけた。屍霊魔術もその一つだ」
セトが闇に閉ざされた部屋の隅を見やると、それに応えたようにそこから忍びが姿を見せた。
忍びは黙したまま、じっとその場に佇む。
「これらの存在は私によって左右される。例えば私が注ぐ力を引けばどうなると思う?」
セトは言いざまに口の中で、何かの呪を唱えた。
忍びは少しも動かず、棒のようにつっ立っている。
そして呪が完成すると同時に。
忍びはその場にどさりと倒れ伏した。
その間、わずか数分だった。
ジキルが倒れた忍びの側に屈みこむ。
「ふむー…」
すでに生命活動を停止してだいぶ経つと思われるそれは、先ほどまでは気がつかなかったがミイラのような状態となっていた。
「屍霊魔術……ネクロマンシーですか」
死体などを動かす魔術……それ自体はジキルの望むものではない。
だが……。
「では桔梗さんのように、一部の忍びたちが心を持っていたのは…?」
あれも同じネクロマンシーなのだろうか?
どうもそうは思えない。
「心だと? 人形に心などあるはずがないだろう」
静かに笑みを浮かべるセトに。
ジキルはますますその考えを強めた。
(ネクロマンシーなら…必要ないですね)
そうだ。
『死者を操る術』ならジキルが求めるものではない。
「あんまりいい趣味じゃないわね」
シャルロットが眉をきゅっとひそめる。
「だいたい忍びたちをみんな、殺しちゃうなんて…」
セトは自らの手をじっと凝視し、声を立てて笑った。
「私が意図せぬとも死んでいただろうがな」
ぐっと見ていた手のひらを握りこむ。
上でしていた爆発音が、この部屋にも近づいてきていた。
ごうっと渦を巻いた炎が、くうぱあたちが落ちてきた穴の上部から逆巻いて、部屋の中へと燃え移る。
「私に食い殺されて…な」
空気の流れが明らかに変わっていた。
セトの服からはみ出している部分の皮膚が、固い紫の鱗へと変化していく。
「竜化……?」
くうぱあがあっけにとられたように声を漏らした。
竜人という雰囲気のするそれから、セトの体は次第に完全な竜へと近づいていく。
「この術はまだ未完成でな…。日に一度だけこの姿になったときに、理性が飛ぶのだ。だが、それもあと3日のこと……」
声帯にも影響が出ているのか、セトの声は高くなったり低くなったりぶれたりした。
「あと3日でこの術は完成し、理性を保ったままの竜化が可能と……」
言葉は途中で竜の咆哮へと変わった。
巨大な紫の竜を、天井の高い広い部屋はすっぽりと内包する。まるでこのために存在していたように…。
「なるほど、そういうことか……」
柱のちょうど影になっている部分に居て、すべてを聞いていた彼は、小さな声で呟いた。
左右で色の違う瞳が、僅かな明かりに照らされてきらりと光る。
「やはりすべては長に聞くのが早かったな……」
屋敷の内情を外から探ると言ったまま、消息を絶っていた久遠がそこに居た。
嫌な気配がびりびりと空気を震わせている。
「だけど…紫竜、か……」
厄介なものを見たというように、久遠は少し顔をしかめた。
勝てるのだろうか? いや……。
「……雲が自由に流れるように、運命も定かではない。常に変化し続ける。運命の変わり目…丁度今がその時かもな。だが……」
久遠は祈る。
「運命がどう変ろうと、人の信念は変らない…。皆が、今の信念を崩さずにいることを俺は遠くで祈ろう」
誰かのために、といいつつも人は自分のために戦っている。それぞれが自分の思いを抱いて。
どうか迎える結末がそれぞれにとって…セインさんにとって満足のいくものであるように。
ドンっ!
紫竜が床を踏みしめ、屋敷全体が揺れたような感覚があった。
『…それまで……生かしておい…て……やろ…う……』
思念のようなものがその場にいた者たちの脳裏に響く。
紫竜は羽ばたいた。
天井をその固い鱗に包まれた体でぶち破り、外へと飛び出す。
それを境に、屋敷の本格的な崩壊が始まった。
「…俺が手伝えるのはここまでだ……」
久遠は紫竜が開けた空へと続く穴へと自らの武器である黒針を飛来させ…それに後から投げた白針を当てた。
ギィンっ…。
火花が飛び散り、回転する黒針がそれを増幅して地上へと豪雷を落とす。
それは屋敷のある一部分をふっ飛ばした。
その始終を見届けると…久遠は姿を消した。
屋敷はやがて業火に包まれ…そして崩れ落ちた。
シャルロットが息をのむ。
「私は世情を探りに出た旅の中で、様々な術を身につけた。屍霊魔術もその一つだ」
セトが闇に閉ざされた部屋の隅を見やると、それに応えたようにそこから忍びが姿を見せた。
忍びは黙したまま、じっとその場に佇む。
「これらの存在は私によって左右される。例えば私が注ぐ力を引けばどうなると思う?」
セトは言いざまに口の中で、何かの呪を唱えた。
忍びは少しも動かず、棒のようにつっ立っている。
そして呪が完成すると同時に。
忍びはその場にどさりと倒れ伏した。
その間、わずか数分だった。
ジキルが倒れた忍びの側に屈みこむ。
「ふむー…」
すでに生命活動を停止してだいぶ経つと思われるそれは、先ほどまでは気がつかなかったがミイラのような状態となっていた。
「屍霊魔術……ネクロマンシーですか」
死体などを動かす魔術……それ自体はジキルの望むものではない。
だが……。
「では桔梗さんのように、一部の忍びたちが心を持っていたのは…?」
あれも同じネクロマンシーなのだろうか?
どうもそうは思えない。
「心だと? 人形に心などあるはずがないだろう」
静かに笑みを浮かべるセトに。
ジキルはますますその考えを強めた。
(ネクロマンシーなら…必要ないですね)
そうだ。
『死者を操る術』ならジキルが求めるものではない。
「あんまりいい趣味じゃないわね」
シャルロットが眉をきゅっとひそめる。
「だいたい忍びたちをみんな、殺しちゃうなんて…」
セトは自らの手をじっと凝視し、声を立てて笑った。
「私が意図せぬとも死んでいただろうがな」
ぐっと見ていた手のひらを握りこむ。
上でしていた爆発音が、この部屋にも近づいてきていた。
ごうっと渦を巻いた炎が、くうぱあたちが落ちてきた穴の上部から逆巻いて、部屋の中へと燃え移る。
「私に食い殺されて…な」
空気の流れが明らかに変わっていた。
セトの服からはみ出している部分の皮膚が、固い紫の鱗へと変化していく。
「竜化……?」
くうぱあがあっけにとられたように声を漏らした。
竜人という雰囲気のするそれから、セトの体は次第に完全な竜へと近づいていく。
「この術はまだ未完成でな…。日に一度だけこの姿になったときに、理性が飛ぶのだ。だが、それもあと3日のこと……」
声帯にも影響が出ているのか、セトの声は高くなったり低くなったりぶれたりした。
「あと3日でこの術は完成し、理性を保ったままの竜化が可能と……」
言葉は途中で竜の咆哮へと変わった。
巨大な紫の竜を、天井の高い広い部屋はすっぽりと内包する。まるでこのために存在していたように…。
「なるほど、そういうことか……」
柱のちょうど影になっている部分に居て、すべてを聞いていた彼は、小さな声で呟いた。
左右で色の違う瞳が、僅かな明かりに照らされてきらりと光る。
「やはりすべては長に聞くのが早かったな……」
屋敷の内情を外から探ると言ったまま、消息を絶っていた久遠がそこに居た。
嫌な気配がびりびりと空気を震わせている。
「だけど…紫竜、か……」
厄介なものを見たというように、久遠は少し顔をしかめた。
勝てるのだろうか? いや……。
「……雲が自由に流れるように、運命も定かではない。常に変化し続ける。運命の変わり目…丁度今がその時かもな。だが……」
久遠は祈る。
「運命がどう変ろうと、人の信念は変らない…。皆が、今の信念を崩さずにいることを俺は遠くで祈ろう」
誰かのために、といいつつも人は自分のために戦っている。それぞれが自分の思いを抱いて。
どうか迎える結末がそれぞれにとって…セインさんにとって満足のいくものであるように。
ドンっ!
紫竜が床を踏みしめ、屋敷全体が揺れたような感覚があった。
『…それまで……生かしておい…て……やろ…う……』
思念のようなものがその場にいた者たちの脳裏に響く。
紫竜は羽ばたいた。
天井をその固い鱗に包まれた体でぶち破り、外へと飛び出す。
それを境に、屋敷の本格的な崩壊が始まった。
「…俺が手伝えるのはここまでだ……」
久遠は紫竜が開けた空へと続く穴へと自らの武器である黒針を飛来させ…それに後から投げた白針を当てた。
ギィンっ…。
火花が飛び散り、回転する黒針がそれを増幅して地上へと豪雷を落とす。
それは屋敷のある一部分をふっ飛ばした。
その始終を見届けると…久遠は姿を消した。
屋敷はやがて業火に包まれ…そして崩れ落ちた。
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