ある時代の流れの中に存在した、ひとつの研究施設を軸にしたキャラ紹介と物語。「戻る」はブラウザBackかパン屑リスト使用推奨です
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何だかだいぶサボっちゃった気がするわね。
毎度、ジーンよ。
ちょっと留守にした隙にセンに日記の主導権を取られてたみたいだし、不覚を取ったわ…。
書きたいこともたくさんあるのに、どうしてこう思うように進まないのかしらね?
今日はお題から「07 もしも一つだけ願いが叶うなら」をお送りするわね。
何だか同じようなタイトルをどこかで見たことあるわね…。
あれ背後が好きだったのよ。
いつもと同じく、この指令は『番外編用12のお題~もしも編~』
「ing+be...」さま(http://xy765.web.fc2.com/)からお借りしてるわ。
**********
それは同じく遺跡の探索者と戦闘をした翌々日のこと。
センと白猫はやや久しぶりに遺跡の外へと出ていた。
今回の遺跡探索は彼らにしては珍しく、少し長めだった。
遺跡へ入る前に用意した食料もとっくに底をつき、後半は夜露で水を得て何とか凌ぐぐらいの生活を送っていた。
空腹を持て余した白猫が何度か遺跡を訪れている鳥型の魔物たちに襲撃をかけようとしたが、腹が減っているためかもしくはあまり狩りの才能が無いのか一羽も捕らえられずに終わった。
センの方はそういう状況に慣れているのか、特に騒ぎもせず動くと余計に腹が減るとばかりに必要以上に動こうとはしなかったが、そんな日々もようやく新しい魔法陣に辿り着くことで終わりを見たのだった。
いつもの場所にセンがテントを張り、それを樹の上で悠々と白猫が見下ろす。
火を起こして鍋をかける段になっていつの間にか火のすぐそばに白猫が陣取り、それを気にするでも無しにセンが飯の支度をするのもこれまた毎度のことだった。
料理にはあまり手慣れていないセンが、ベースキャンプで買い求めた干し肉を軽く炙り、簡単な食事の準備を終える。
だけれども彼は食事よりも酒の方を好んでいたため、それらはほとんどが白猫の腹の中へと消えるのだった。
ざっと片づけをして、センは火の側で本を開いた。
滞在者の一人が持っていた古書に興味を持ち、交渉して譲り受けた。
センは活字を追うのが好きだった。
まだ自分が知らぬ知識を得ていると思うことは、静かに燃える炎に炙られたように心の奥底を高揚させる。
そうして思わぬトラブルに巻き込まれることもこれまで多々あったが、それでもその性質は変えることが出来なかった。
これは遺伝的なものではないかとセンは思っていた。
決して表立って認めることはないが、一応彼の生みの親…母親に当たる少女もまたとても研究熱心な魔術師であったのだから。
白猫が少し興味を引かれてか本を覗き込むが、すぐに飽きて傍らで丸くなった。
センはそれをちらりと見やったが、特に何かをするわけでもなく本に目を戻す。
それは古い錬金術の書のようだった。
自分の出生のせいか、センは特にこの分野を好むきらいがあった。
「……合成獣、か…」
ぽつりとその口から呟きが零れる。
自分の生まれがそれと大きく違うとは思わない。
センは複製人間…ある少年の複製体(クローン)であった。
ある人の手によって、人工的にこの世に生み出されたという点ではおそらくそう変わらないのであろう。
これまで何人もセンをセンという一個体として認めてくれる相手は居たが、それでもセンは自分の出生は変わらないと思っていた。
どこまでいっても自分が複製体であるという事実は変わらない。
それを否定しては自分は自分でありえない。
「俺は…融通が利かないんだろうか……?」
やや苦笑が零れる。
自分のそういう思いはやはりあまり理解はされてこなかった、とセンは思う。
自分を人間だと認めてくれる人は居た。
だが、自分が複製体だとそれをきちんと肯定してくれる人はあまり居なかったように思うのだ。
「俺は俺だ。別にもう、複製体だから悪いとは思ってない」
すでにセンの目は活字を追ってはいなかった。
ふう、と息を吐き、何とはなしに背をぐっと後ろに逸らして空を見上げる。
重力に従って身体が後ろに倒れかかるのを、腕を伸ばし片の手の平を地面について支えた。
「別に普通に生まれた人間になりたいわけじゃない…。それは俺ではないからな」
だから出来れば、ありのままの自分を認めて受け止めて欲しい。
それを為す為には、自分もまた相手に心を開かねばならないということも分かっていたけれど。
「セインは多分、そんなこと考えてもいないんだろうな……」
遺伝子を分けた弟のような存在のことを思い出して、センはさらに苦笑を深める。
それでもおそらくそれが意識的でも無意識でも願うは同じ。
「……………」
センはもう一度息を吐き、ごそごそと身を起こした。
小さくなっていた火に薪をくべる。
この遺跡の探索で一体何を見つけるのだろうか?
自分の求めているものもどこかで手に入れることが出来るのだろうか?
いつの間にか遺跡に色々な夢を懸けている事に、センはまだ自分では気づいていなかった。
こうしてまた、遺跡へと捕らわれた冒険者が1人、再び遺跡へと足を踏み入れるのだった。
**********
最近よく思うんだけど、ジーンさんの扱い酷くないかしら?
きっとセンが変に悩むからいけないのね。
まったく、ちょっとはこう愛想よく笑ったりとか出来ないものなのかしらねぇ
毎度、ジーンよ。
ちょっと留守にした隙にセンに日記の主導権を取られてたみたいだし、不覚を取ったわ…。
書きたいこともたくさんあるのに、どうしてこう思うように進まないのかしらね?
今日はお題から「07 もしも一つだけ願いが叶うなら」をお送りするわね。
何だか同じようなタイトルをどこかで見たことあるわね…。
あれ背後が好きだったのよ。
いつもと同じく、この指令は『番外編用12のお題~もしも編~』
「ing+be...」さま(http://xy765.web.fc2.com/)からお借りしてるわ。
**********
それは同じく遺跡の探索者と戦闘をした翌々日のこと。
センと白猫はやや久しぶりに遺跡の外へと出ていた。
今回の遺跡探索は彼らにしては珍しく、少し長めだった。
遺跡へ入る前に用意した食料もとっくに底をつき、後半は夜露で水を得て何とか凌ぐぐらいの生活を送っていた。
空腹を持て余した白猫が何度か遺跡を訪れている鳥型の魔物たちに襲撃をかけようとしたが、腹が減っているためかもしくはあまり狩りの才能が無いのか一羽も捕らえられずに終わった。
センの方はそういう状況に慣れているのか、特に騒ぎもせず動くと余計に腹が減るとばかりに必要以上に動こうとはしなかったが、そんな日々もようやく新しい魔法陣に辿り着くことで終わりを見たのだった。
いつもの場所にセンがテントを張り、それを樹の上で悠々と白猫が見下ろす。
火を起こして鍋をかける段になっていつの間にか火のすぐそばに白猫が陣取り、それを気にするでも無しにセンが飯の支度をするのもこれまた毎度のことだった。
料理にはあまり手慣れていないセンが、ベースキャンプで買い求めた干し肉を軽く炙り、簡単な食事の準備を終える。
だけれども彼は食事よりも酒の方を好んでいたため、それらはほとんどが白猫の腹の中へと消えるのだった。
ざっと片づけをして、センは火の側で本を開いた。
滞在者の一人が持っていた古書に興味を持ち、交渉して譲り受けた。
センは活字を追うのが好きだった。
まだ自分が知らぬ知識を得ていると思うことは、静かに燃える炎に炙られたように心の奥底を高揚させる。
そうして思わぬトラブルに巻き込まれることもこれまで多々あったが、それでもその性質は変えることが出来なかった。
これは遺伝的なものではないかとセンは思っていた。
決して表立って認めることはないが、一応彼の生みの親…母親に当たる少女もまたとても研究熱心な魔術師であったのだから。
白猫が少し興味を引かれてか本を覗き込むが、すぐに飽きて傍らで丸くなった。
センはそれをちらりと見やったが、特に何かをするわけでもなく本に目を戻す。
それは古い錬金術の書のようだった。
自分の出生のせいか、センは特にこの分野を好むきらいがあった。
「……合成獣、か…」
ぽつりとその口から呟きが零れる。
自分の生まれがそれと大きく違うとは思わない。
センは複製人間…ある少年の複製体(クローン)であった。
ある人の手によって、人工的にこの世に生み出されたという点ではおそらくそう変わらないのであろう。
これまで何人もセンをセンという一個体として認めてくれる相手は居たが、それでもセンは自分の出生は変わらないと思っていた。
どこまでいっても自分が複製体であるという事実は変わらない。
それを否定しては自分は自分でありえない。
「俺は…融通が利かないんだろうか……?」
やや苦笑が零れる。
自分のそういう思いはやはりあまり理解はされてこなかった、とセンは思う。
自分を人間だと認めてくれる人は居た。
だが、自分が複製体だとそれをきちんと肯定してくれる人はあまり居なかったように思うのだ。
「俺は俺だ。別にもう、複製体だから悪いとは思ってない」
すでにセンの目は活字を追ってはいなかった。
ふう、と息を吐き、何とはなしに背をぐっと後ろに逸らして空を見上げる。
重力に従って身体が後ろに倒れかかるのを、腕を伸ばし片の手の平を地面について支えた。
「別に普通に生まれた人間になりたいわけじゃない…。それは俺ではないからな」
だから出来れば、ありのままの自分を認めて受け止めて欲しい。
それを為す為には、自分もまた相手に心を開かねばならないということも分かっていたけれど。
「セインは多分、そんなこと考えてもいないんだろうな……」
遺伝子を分けた弟のような存在のことを思い出して、センはさらに苦笑を深める。
それでもおそらくそれが意識的でも無意識でも願うは同じ。
「……………」
センはもう一度息を吐き、ごそごそと身を起こした。
小さくなっていた火に薪をくべる。
この遺跡の探索で一体何を見つけるのだろうか?
自分の求めているものもどこかで手に入れることが出来るのだろうか?
いつの間にか遺跡に色々な夢を懸けている事に、センはまだ自分では気づいていなかった。
こうしてまた、遺跡へと捕らわれた冒険者が1人、再び遺跡へと足を踏み入れるのだった。
**********
最近よく思うんだけど、ジーンさんの扱い酷くないかしら?
きっとセンが変に悩むからいけないのね。
まったく、ちょっとはこう愛想よく笑ったりとか出来ないものなのかしらねぇ
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