ある時代の流れの中に存在した、ひとつの研究施設を軸にしたキャラ紹介と物語。「戻る」はブラウザBackかパン屑リスト使用推奨です
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1.「出会い」
それは1人の少女の物語。
時は20XX年、まだその島国が日本と呼ばれていた頃。
都心部からは少し離れた、ベッドタウンとも呼ばれる住宅地の一角からそれは始まった。
「ほな、ウチ行ってくるわ」
明るい茶色に染めた長い髪をポニーテールに結い上げたセーラー服の少女が、大きなボストンバッグを片手にそうにっこりと笑った。
「心配は無用や。すぐにあのバカを見つけて戻ってくるでな」
「……」
彼女の前に静かな無表情で佇んでいたもう1人の少女が、初めて彼女の言う内容に気が付いたかのように眉を小さく潜める。
「…心配はしない。しないが」
だがその先は言い澱んだかのように、口の中に消えた。
前に立つ親友の目が、それを言葉にすることを望んでないように感じたので。
代わりに少女は一つ頷く。
「分かった」
その答えを聞いて、ポニーテールの少女の笑顔が満足げなものに変わった。
「お土産期待しとき。なっちゃんの好きなもんどっさり買うてきたるわ」
…その言葉が2人がこの世で交わした最後の言葉となった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「おねえさんは誰?」
「…へ?!」
風夏は突然背後からかけられた幼い声に、慌てて振り返った。
「どうしてこんなとこにいるの?」
それはこっちのセリフだと言いたい。
目の前に立つのは年の頃10を過ぎたばかりかといった幼い少年だった。
青銀色に輝く細い髪と左右で色の違う瞳が目を惹きつける。
外人さんだろうか?
こんな綺麗な色の髪も空の青と金の輝きを映し出した瞳も、見たことがない。
「あんな?そら、ウチのセリフやで。あんたこそこんな山奥で何しとんの?」
風夏は少年に目線を合わせるべく膝を折り中腰になると、眉を潜めて聞き返した。
一瞬言葉が通じるのだろうか?という疑問を抱くが、そういえば最初からこの少年は日本語で話しかけてきたのだから、と思い直す。
「…ここって山奥なんだ。どうりで寒いはずだよねぇ」
少年はそう、年に似合わぬどこか大人びた苦笑を浮かべた。
その瞳は諦めのような色に支配されている。
「何や、あんた自分のおるところも分からへんのかいな。完璧に迷子やな」
並大抵の迷子では迷い込むはずもない山の中なのだが、外人だからそういうこともあるのかもしれないと風夏は勝手な思い込みで思った。
ため息をついて膝を伸ばし、中腰を解く。
「しゃーないな。ウチはまだ用事の途中なんやけど、下まで送ったるわ」
どうせ今回もガセネタっぽいしなぁ、と心の呟きが外に零れる。
「ガセネタって何?」
はぐれないようにと伸ばした手を取らず、少年は彼女の呟きを聞き咎めてきた。
聞くまでは動かないといったような頑とした様子に、風夏の表情に少しだけ苦笑が滲む。
「あんたには関係ない話やけど…ま、ええか。ウチは人探しをしとるんや。この山に登るとこを見たっちゅう人がおったで上ってきてみたんやけどなぁ…」
消息不明になったあいつを追ってすでに3ヶ月。
いまだ何の手がかりもつかめない状況に、風夏の心にも次第に苛立ちと諦めにも似た思いが巣食い始めていた。それでも半ば意地のような気持ちで探し続けている。
「まさか思うけど知らへんわな?高岡竜司っちゅうんやけど」
「……」
何の期待もせずに一応聞いてみた風夏の言葉に、少年が妙な反応を見せた。
不思議そうな目で風夏を見つめた後、逡巡するように地面の上に視線を彷徨わせる。
「…何か知っとるんか?」
何度も空振りで、その度にだんだんと疲れて。
もうあいつはこの世におらへんのちゃうかと思い始めていた心が、何故だかコトンと揺れた。
それは1人の少女の物語。
時は20XX年、まだその島国が日本と呼ばれていた頃。
都心部からは少し離れた、ベッドタウンとも呼ばれる住宅地の一角からそれは始まった。
「ほな、ウチ行ってくるわ」
明るい茶色に染めた長い髪をポニーテールに結い上げたセーラー服の少女が、大きなボストンバッグを片手にそうにっこりと笑った。
「心配は無用や。すぐにあのバカを見つけて戻ってくるでな」
「……」
彼女の前に静かな無表情で佇んでいたもう1人の少女が、初めて彼女の言う内容に気が付いたかのように眉を小さく潜める。
「…心配はしない。しないが」
だがその先は言い澱んだかのように、口の中に消えた。
前に立つ親友の目が、それを言葉にすることを望んでないように感じたので。
代わりに少女は一つ頷く。
「分かった」
その答えを聞いて、ポニーテールの少女の笑顔が満足げなものに変わった。
「お土産期待しとき。なっちゃんの好きなもんどっさり買うてきたるわ」
…その言葉が2人がこの世で交わした最後の言葉となった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「おねえさんは誰?」
「…へ?!」
風夏は突然背後からかけられた幼い声に、慌てて振り返った。
「どうしてこんなとこにいるの?」
それはこっちのセリフだと言いたい。
目の前に立つのは年の頃10を過ぎたばかりかといった幼い少年だった。
青銀色に輝く細い髪と左右で色の違う瞳が目を惹きつける。
外人さんだろうか?
こんな綺麗な色の髪も空の青と金の輝きを映し出した瞳も、見たことがない。
「あんな?そら、ウチのセリフやで。あんたこそこんな山奥で何しとんの?」
風夏は少年に目線を合わせるべく膝を折り中腰になると、眉を潜めて聞き返した。
一瞬言葉が通じるのだろうか?という疑問を抱くが、そういえば最初からこの少年は日本語で話しかけてきたのだから、と思い直す。
「…ここって山奥なんだ。どうりで寒いはずだよねぇ」
少年はそう、年に似合わぬどこか大人びた苦笑を浮かべた。
その瞳は諦めのような色に支配されている。
「何や、あんた自分のおるところも分からへんのかいな。完璧に迷子やな」
並大抵の迷子では迷い込むはずもない山の中なのだが、外人だからそういうこともあるのかもしれないと風夏は勝手な思い込みで思った。
ため息をついて膝を伸ばし、中腰を解く。
「しゃーないな。ウチはまだ用事の途中なんやけど、下まで送ったるわ」
どうせ今回もガセネタっぽいしなぁ、と心の呟きが外に零れる。
「ガセネタって何?」
はぐれないようにと伸ばした手を取らず、少年は彼女の呟きを聞き咎めてきた。
聞くまでは動かないといったような頑とした様子に、風夏の表情に少しだけ苦笑が滲む。
「あんたには関係ない話やけど…ま、ええか。ウチは人探しをしとるんや。この山に登るとこを見たっちゅう人がおったで上ってきてみたんやけどなぁ…」
消息不明になったあいつを追ってすでに3ヶ月。
いまだ何の手がかりもつかめない状況に、風夏の心にも次第に苛立ちと諦めにも似た思いが巣食い始めていた。それでも半ば意地のような気持ちで探し続けている。
「まさか思うけど知らへんわな?高岡竜司っちゅうんやけど」
「……」
何の期待もせずに一応聞いてみた風夏の言葉に、少年が妙な反応を見せた。
不思議そうな目で風夏を見つめた後、逡巡するように地面の上に視線を彷徨わせる。
「…何か知っとるんか?」
何度も空振りで、その度にだんだんと疲れて。
もうあいつはこの世におらへんのちゃうかと思い始めていた心が、何故だかコトンと揺れた。
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