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ある時代の流れの中に存在した、ひとつの研究施設を軸にしたキャラ紹介と物語。「戻る」はブラウザBackかパン屑リスト使用推奨です
 
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うーん、と少年は困ったように首を傾げた。
「…別に何もしてないよ」
小さな手をもう動かない妖鳥に触れる。
「たまたまここに来て、たまたまここに立ってて、たまたまお姉さんと会った。それだけ」
「そんな偶然があるもんか」
女は即座に眉を顰めた。
だってここは険しい山なのだ。おまけに妖鳥まで出る。
こんな幼い少年が居るはずがないところだ。
「誰かにここに連れてこられた?それとも…ここに住んでるのかい?」
女の口調に宿った警戒が深みを増す。
棍を構える手に柔らかな力がこもった。
対する少年は特に動く様子を見せない。
「連れてこられてもないし、住んでもない。そんなグウゼンってあるんだよ」
容姿から推測する年頃とは不釣合いな、大人びた口調で少年はつとつとと語る。
どこか寂しげな微笑みが目を惹いた。
女は警戒を解かぬまま、少年と妖鳥に近づく。
手の触れる距離まで来て、少年の瞳の色が先ほどまでとは違っているのに気付いた。
目を惹くオッドアイは今は両方ともただ静かな蒼に変わっていた。


「あんた…何者だい」
女は緊張に乾いた唇を舌で軽く湿す。
少年の目がすっと流れるように伏せられた。
「僕は…僕の名前はレン。レン・ラムリィ。たぶん…ニンゲン」
「たぶん…?」
少年、レンから目を離さぬままに、女は妖鳥に手を伸ばす。
その動きに気遣ってかレンが少し身を引き、妖鳥から離れた。
それでもここで無防備に解体作業を始められるほど女は図太くもなかったので、大きな羽を一枚毟り取る。これでも証明になるだろうか…?分からない。
出来れば爪の一本でも持ち帰りたかったところだが…。
「……だよ」
レンがぽつりと何か呟いたのが聞こえた。
「ん…?」
女はその片手に棍、片手に羽を握り締めたまま聞き返す。
「ムダ、だよ。それ持ってかえっても」
言い直された今度はよく聞こえた。
レンの視線は女の手にしている羽に向かっている。
「……どういう意味だい。それは」
自分の行動を無駄呼ばわりされて、それでも女はその言葉の理由を聞いてみたくなった。
この子供は何を言い出すつもりだろうか。
いまだ威嚇するように突きつけていた棍の先を下げ、答えを促す。
レンは少し躊躇ったが、話すまで納得しないと分かったのか、やがて小さなため息と一緒に口を開いた。
「3年まえもやっぱり誰かがこの鳥をたおしてた…。10年まえもまた違う誰かがこの鳥をたおしてたんだ」
まるで実際に見ていたかのような言葉。
女はゾクリとしたものを覚えて、慌ててもう一度倒れた妖鳥を振り返った。

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