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ある時代の流れの中に存在した、ひとつの研究施設を軸にしたキャラ紹介と物語。「戻る」はブラウザBackかパン屑リスト使用推奨です
 
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「まさかこんなところで邪魔が入るとはな…」
岩陰からいかにも怪しげな全身黒ずくめの男が姿を現した。
その後ろからそれよりも一回りほど小柄な、やはり黒ずくめな人影がもう一人出てくる。
「いつものごとくそろそろ冒険者に始末させる頃合かと思ったが」
聞きもしないのにぺらぺら自分の悪事を喋ってくれる。
典型的な小悪党タイプだ。


「…このおじさんたち、だよ。さっき話してたひとたち…」
レンが浮かない目で男たちを見つめた。
その声音には怯えの色はない。
女は油断なく棍を構えながら、もう一度男たちを見返した。
手にした得物はどちらも小型のナイフ。
黒いローブはただ単に人目を忍ぶためだけのものであるのか、防御的効果はまったくなさそうに見える。
「気に入らないね。全部領主の差し金ってやつかい?」
女はすっと目を細めた。


彼らの話をまとめると、この近辺で起こっていることはすべて人為的で作為的なもののようだった。
いわく。領主は表立っては領民を思いやるいい領主のようだが、その実は召喚魔術に凝っており、この周辺を魔術に実験台にしている。実験が済んだら、通りすがりの冒険者にいくばくかの金を与えて始末させ、また次の実験にかかる。
いわく。領民を苦しめその嘆きの声を聞くことを、領主は実は心地好く思っているのではないか。犠牲になった領民を弔うと言いながら、その遺体を実験に使っているのではないか。


「命をもてあそぶなんて…許せないよね」
レンが口の中で小さく呟いた言葉を、風が耳元に運んでくる。
そういう輩は、女もまた大嫌いだった。
「話が違うじゃないか。私は契約違反は嫌いなんだよ」
女は最初に出てきた方の男の喉元に棍を突きつける。
「嘘つきな領主は今はお屋敷かい?よけりゃ案内して欲しいな」
男が喉の奥でぐぅ…と唸り声を漏らした。
その目はいまだ反抗的で、素直に女の声に従う様子はない。
と、レンが小さく警告した。
「気をつけて…!そっちのおじさんは魔法使いだよ」
その声と同時に反射的に棍が動く。
小柄な男の方の唇が僅かに動き、呪語を紡いでいるのをその後で知覚し、ゾクリと背筋が粟立った。
間に合わない…?!
と、唐突に目の前に小さな影が飛び込んできた。
それは男の手から放たれた氷の矢を手にした光の盾で弾く。
「ごめん。ちょっと言うのおそかったよね」
さっきまで女の背中に庇われるような位置に居たレンが、いつの間にかそう目の前で申し訳なさそうな顔をしていた。
その手から光の盾が消失する。
それもまた魔法だと、女にも分かった。
動いた気配もなければ呪語を唱えた気配もない。
「何……?」
「みじかい距離なら自分の意識でなんとかなるんだねー…。はじめて知ったよ」
何故かそう言うレンは少しだけ嬉しそうだった。
魔法が相殺されて呆然としていた男が我に返り、さらにもう一人の男もナイフを走らせるが、相手の持ち技を知ってしまえば女にも油断はない。


そう遠くない時間に女は男2人を叩きのめしていた。

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