ある時代の流れの中に存在した、ひとつの研究施設を軸にしたキャラ紹介と物語。「戻る」はブラウザBackかパン屑リスト使用推奨です
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2、「大罪」
「言い分はあるか」
聞くだけは聞いてやると言うような威圧的な態度に、怒りを覚えるより先に困惑した。
レンは鉄格子の向こうに姿を現した老人を見上げる。
わずかに灰色がかった翼は年のせいか色艶が褪せ、そのボリュームも足りなかった。
それでもやはり、この周辺に住んでいる人たちの背中には翼があるのだと知れる。
そういえば先ほど自分たちを取り囲み武器を突きつけていた人たちの背中にも、例外なく翼があった。
ここは彼らの村なのだろう。
まったく老人の声を無視して寝転がったままの男を横目に見ながら、レンは鉄格子に近づく。
「ええと…あの。説明してほしい…んだけど…」
どうして捕らえられたのか、その理由もレンはまだ知らない。
何故、この男と一緒に閉じ込められたのか、せめてその理由だけでも教えて欲しい。
言葉の意図を汲んでか、老人の目が今さら何をと言うように咎めるような色を帯びた。
しかし思い直したのかどかっと鉄格子の向こうに腰を下ろす。
「その男は重罪人だ。神をも恐れぬ大罪を犯した。よって捕らえたのだ」
重罪人と聞き、レンは一瞬ちらりと男の方に目線を流した。
しかし男は何の動揺も見せず、ピクリとも反応しない。
「…この人、何をしたの?」
本人の側でする会話でもないと思ったが、少しの好奇心が勝った。
神様も恐れないと言われるほどの罪…一体、この男は何をしたのだろう?
無愛想だが、そう悪い人にも見えないのに。
レンはそう思った。
「我が部族に遥か昔から伝わる宝を盗んだのだ。あれは使い方を誤れば、大変なことが起こると言われておる」
老人は厳めしい顔に苦渋の皺を刻みながら続ける。
「所詮羽根があろうともあの呪われた娘の兄だな。さっさと妹同様追放しておくべきだったのだ」
ふと何かがレンの心に引っかかった。
老人の顔に浮かぶ感情は、自分がよく向けられていたものと出所を同じくしているように思える。
いつの間にか寝転がっていたはずの男が、激しい怒りを湛えた目で老人を睨みつけていた。
「お前らがそんなだから……」
男の噛み締められた口から、呻くような言葉が漏れる。
レンは思わずぎゅっと男の黒い服の裾を掴んでいた。
鉄格子を挟んでも相手を殺しかねないほどの憎悪に、恐怖も怯えも煽られる。
だがそれ以上に痛くて悲しかった。
自分の色の違う目を見たときの男の反応が蘇る。
たぶんこの人も知っているのだ。
自分ではどうにもならないところで差別され、疎まれる状況を知っているのだ。
老人はその殺意を浴びても平然と立っていた。
「お前のようなやつにわしらと同じ翼があるのが許せんわ。たぶんそれは皆も同じだろうよ」
だから何とは老人は言わなかった。
すっくと立ち上がり、男をねめつけるように一瞥すると、背を向けてその場から離れていく。
その背中を変わらず燃えるような視線で射抜きながら、男は動かなかった。
レンも男の服の裾を掴んだまま、泣き出したいような思いを抱え老人の後姿を見送った。
「言い分はあるか」
聞くだけは聞いてやると言うような威圧的な態度に、怒りを覚えるより先に困惑した。
レンは鉄格子の向こうに姿を現した老人を見上げる。
わずかに灰色がかった翼は年のせいか色艶が褪せ、そのボリュームも足りなかった。
それでもやはり、この周辺に住んでいる人たちの背中には翼があるのだと知れる。
そういえば先ほど自分たちを取り囲み武器を突きつけていた人たちの背中にも、例外なく翼があった。
ここは彼らの村なのだろう。
まったく老人の声を無視して寝転がったままの男を横目に見ながら、レンは鉄格子に近づく。
「ええと…あの。説明してほしい…んだけど…」
どうして捕らえられたのか、その理由もレンはまだ知らない。
何故、この男と一緒に閉じ込められたのか、せめてその理由だけでも教えて欲しい。
言葉の意図を汲んでか、老人の目が今さら何をと言うように咎めるような色を帯びた。
しかし思い直したのかどかっと鉄格子の向こうに腰を下ろす。
「その男は重罪人だ。神をも恐れぬ大罪を犯した。よって捕らえたのだ」
重罪人と聞き、レンは一瞬ちらりと男の方に目線を流した。
しかし男は何の動揺も見せず、ピクリとも反応しない。
「…この人、何をしたの?」
本人の側でする会話でもないと思ったが、少しの好奇心が勝った。
神様も恐れないと言われるほどの罪…一体、この男は何をしたのだろう?
無愛想だが、そう悪い人にも見えないのに。
レンはそう思った。
「我が部族に遥か昔から伝わる宝を盗んだのだ。あれは使い方を誤れば、大変なことが起こると言われておる」
老人は厳めしい顔に苦渋の皺を刻みながら続ける。
「所詮羽根があろうともあの呪われた娘の兄だな。さっさと妹同様追放しておくべきだったのだ」
ふと何かがレンの心に引っかかった。
老人の顔に浮かぶ感情は、自分がよく向けられていたものと出所を同じくしているように思える。
いつの間にか寝転がっていたはずの男が、激しい怒りを湛えた目で老人を睨みつけていた。
「お前らがそんなだから……」
男の噛み締められた口から、呻くような言葉が漏れる。
レンは思わずぎゅっと男の黒い服の裾を掴んでいた。
鉄格子を挟んでも相手を殺しかねないほどの憎悪に、恐怖も怯えも煽られる。
だがそれ以上に痛くて悲しかった。
自分の色の違う目を見たときの男の反応が蘇る。
たぶんこの人も知っているのだ。
自分ではどうにもならないところで差別され、疎まれる状況を知っているのだ。
老人はその殺意を浴びても平然と立っていた。
「お前のようなやつにわしらと同じ翼があるのが許せんわ。たぶんそれは皆も同じだろうよ」
だから何とは老人は言わなかった。
すっくと立ち上がり、男をねめつけるように一瞥すると、背を向けてその場から離れていく。
その背中を変わらず燃えるような視線で射抜きながら、男は動かなかった。
レンも男の服の裾を掴んだまま、泣き出したいような思いを抱え老人の後姿を見送った。
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