ある時代の流れの中に存在した、ひとつの研究施設を軸にしたキャラ紹介と物語。「戻る」はブラウザBackかパン屑リスト使用推奨です
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風夏はポケットを探り、お守り袋を取り出した。
どこの神社にもあるような、青い袋のそれを両の手のひらで包み込む。
「大したケガもなく済んどるんは、これのおかげもあるんかもなぁ〜」
思わず笑みがこぼれた。
それが風夏の手に渡ったのは、2,3年前。
お守り袋には、それを扱っていた神社の名前が金字で刺繍してある。
「何や、えらい懐かしゅう感じるわ」
神社の名前を指でなぞり、その神社の主に思いを馳せた。
『泉水神社』
それは彼女の幼馴染みが生まれ育った神社だった。
………
「お前はホントにワケ分からないもんに狙われるやつだよな〜」
絵馬の整理をしながら、竜司がため息混じりに呟いた。
呆れたような視線を向けられ、思わずむかっとする。
「うちだって、好きで狙われとるわけちゃうわー!」
そう、それは日課とも言えるぐらいいつもある出来事。
学校帰りに妖魔に追いかけられた風夏が、結界が張られている神社に逃げ込むのは。
そして神社を包みこむ結界を張っているのは、目の前のどこか軽薄そうな男なのだが。
「うちだって、ほんま迷惑しとるんやで?!
あんたみたいな無神経には分からへんやろけどな!」
風夏はびしっと指を突きつけて、竜司にまくしたてた。
張り巡らせられた結界に便乗しているのは感謝するべきことなのかもしれないが、この男の一言がすべてを台無しにするのだ。
幼馴染とはいえ、いちいち神経を刺激する厄介な相手である。
「俺のどこが無神経だって?」
そう言いながら、竜司は次におみくじの箱を取り上げた。
と、ふと思い立ったように風夏の目の前にその箱を差し出す。
「引いてみろよ。俺んとこのおみくじは、結構当たるって有名なんだ」
小ぶりの木箱を揺らせば、カサカサと紙の触れ合う音がした。
風夏は木箱を竜司の方に押し返す。
「うちはおみくじは嫌いやって言うてるやろ!…悪い結果が出たら気になるやんか」
思わず本音が漏れると、竜司が声を立てて笑った
木箱を下に置き、その中をがさがさとかき回す。
「やる」
抜き出した指の先には一枚のおみくじが挟まれていた。
風夏が受け取るまで、その手は揺らがず突きつけられたまま。
「ほんま、あんたって強引やな…」
それが分かっているから、風夏はしぶしぶと竜司の手からおみくじを取りあげた。
何となく分かっていたことだが、がさがさとおみくじを広げると、そこにはデカデカと『大吉』と書かれていた。
それを見ることもせずに、竜司がこれまた整理途中だったお守りの袋を1つ、風夏の膝の上に放る。
「うちの大吉おみくじとお守り。最強のタッグだ」
ワケの分からないことを言って、へらへらと笑う。
「特別にタダで分けてやるよ。持ってけ泥棒」
………
「まったく誰が泥棒やねん」
風夏はお守りの文字を見ながら笑った。
今ではあの時竜司は、少しでも気を楽にしてくれようとしたのだと思っている。
まあ、真偽のほどは分からないが。
「竜司は昔っからそそっかしいとこあったしなぁ〜」
お守りの表には『商売繁盛』と刻まれていた。
風夏はそれを再び大事そうにポケットにしまった。
どこの神社にもあるような、青い袋のそれを両の手のひらで包み込む。
「大したケガもなく済んどるんは、これのおかげもあるんかもなぁ〜」
思わず笑みがこぼれた。
それが風夏の手に渡ったのは、2,3年前。
お守り袋には、それを扱っていた神社の名前が金字で刺繍してある。
「何や、えらい懐かしゅう感じるわ」
神社の名前を指でなぞり、その神社の主に思いを馳せた。
『泉水神社』
それは彼女の幼馴染みが生まれ育った神社だった。
………
「お前はホントにワケ分からないもんに狙われるやつだよな〜」
絵馬の整理をしながら、竜司がため息混じりに呟いた。
呆れたような視線を向けられ、思わずむかっとする。
「うちだって、好きで狙われとるわけちゃうわー!」
そう、それは日課とも言えるぐらいいつもある出来事。
学校帰りに妖魔に追いかけられた風夏が、結界が張られている神社に逃げ込むのは。
そして神社を包みこむ結界を張っているのは、目の前のどこか軽薄そうな男なのだが。
「うちだって、ほんま迷惑しとるんやで?!
あんたみたいな無神経には分からへんやろけどな!」
風夏はびしっと指を突きつけて、竜司にまくしたてた。
張り巡らせられた結界に便乗しているのは感謝するべきことなのかもしれないが、この男の一言がすべてを台無しにするのだ。
幼馴染とはいえ、いちいち神経を刺激する厄介な相手である。
「俺のどこが無神経だって?」
そう言いながら、竜司は次におみくじの箱を取り上げた。
と、ふと思い立ったように風夏の目の前にその箱を差し出す。
「引いてみろよ。俺んとこのおみくじは、結構当たるって有名なんだ」
小ぶりの木箱を揺らせば、カサカサと紙の触れ合う音がした。
風夏は木箱を竜司の方に押し返す。
「うちはおみくじは嫌いやって言うてるやろ!…悪い結果が出たら気になるやんか」
思わず本音が漏れると、竜司が声を立てて笑った
木箱を下に置き、その中をがさがさとかき回す。
「やる」
抜き出した指の先には一枚のおみくじが挟まれていた。
風夏が受け取るまで、その手は揺らがず突きつけられたまま。
「ほんま、あんたって強引やな…」
それが分かっているから、風夏はしぶしぶと竜司の手からおみくじを取りあげた。
何となく分かっていたことだが、がさがさとおみくじを広げると、そこにはデカデカと『大吉』と書かれていた。
それを見ることもせずに、竜司がこれまた整理途中だったお守りの袋を1つ、風夏の膝の上に放る。
「うちの大吉おみくじとお守り。最強のタッグだ」
ワケの分からないことを言って、へらへらと笑う。
「特別にタダで分けてやるよ。持ってけ泥棒」
………
「まったく誰が泥棒やねん」
風夏はお守りの文字を見ながら笑った。
今ではあの時竜司は、少しでも気を楽にしてくれようとしたのだと思っている。
まあ、真偽のほどは分からないが。
「竜司は昔っからそそっかしいとこあったしなぁ〜」
お守りの表には『商売繁盛』と刻まれていた。
風夏はそれを再び大事そうにポケットにしまった。
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